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7話 懺悔(ざんげ)・・・
 一日の間に、これほど濃厚な時間を過ごした事が、あっただろうか。
 思うことを言い、帰って来る言葉や、考え方が一致している・・・そんな相手と、
 時を過ごして得た充実感と幸福感。それは、そう簡単には見つけることのできない、
 まるで砂漠の中で、やっと見つけた、小さな宝箱のような物。
 宝箱の中には、小さな種が、ひと粒だけ入っていて、それは他人の目には見えない。
 運命の赤い糸で結ばれた者達にしか見えなくて、大事に水をやり、日の光を当てて、
 愛という名の栄養を与えて、大切に育てていくと、どんな花が咲くのだろう。
 どんな大きな樹に育っていくのだろう・・・紗樹は、ふと、そんな事を想った。
 いい年をして、何を考えているんだか、と自嘲しながらも、今夜の想いは心に鍵をかけて、
 そっと、しまっておくつもりだった。
 
 しかし、あくる日から、忠司からのメールや電話での回数は、以前よりも、
 もっと熱烈に増えていた。
 
 声が聞きたい・・・逢いたい・・・すぐにでも飛んで行きたい。
 
 紗樹は、いや、女なら誰でも、こんな言葉を、メールや電話のたびに聞くと、
 嬉しくて、たまらなくなるだろう。
 でも、男というものは、女を振り向かせる為には、これくらいの言葉は、
 常套手段であろうと言う事も、解っていたし、
 もし、忠司の気持が、素直に言葉通りであったとしても、独り身の寂しい心が、
 言わせているのだろうと思っていた。

 だから、紗樹の心は、いつもどこかで冷めているような所があった。
 今、確実に忠司に惹かれているが、本気になる訳には行かないのは、夫が居る事は、
 もちろんのこと、忠司と接していると、まるでお互いに純愛で結ばれている様な、
 錯覚に陥ってしまうのだけど・・・実のところ、
 紗樹には、過去にセックスフレンドの存在があった時期がある。

 過去3年の間に、何人かの男達とそういう関係を持っていた。
 夫からは、満たされる事がない心と性のはけぐちを、そこに求めていた。

 最初の頃、情が移り、苦しい程の思いに涙した相手もいたことはいたが、
 結局、口ほどに情熱を持たない男や、自分だけの都合しか考えない男に、
 自分の感情も、いつしか冷め、別れては、違う男と付き合い、そのうちに、
 夫に対する、後ろめたさも感じる事もなく、安易に、上手く割り切って、
 安全に付き合えばいい。などと、そんな軽薄で、心の冷めた女になっていた。

 しかし、忠司のストレートな想いは、紗樹の心の冷めた部分を確実に溶かして、
 序々に熱いものへと変えていったのである。

 長文を書くのに適しているパソコンで作成するメールは、
 いかにも手紙を書いている感じがあって、紗樹は好きだった。
 まだ、一回しか逢っていないが、だからこそ今の内に、自分の全てを、
 さらけ出しておこうと思った紗樹は、忠司に長い手紙を綴った。
 知らなくてもいいのかもしれない、知りたくも無いかもしれない。
 けれど、あえて、知ってもらいたい。
 そして、真正面から向き合っていきたいと、この時思ったのだ。
 自分の過去や、自分がどんな人間なのか知って欲しいなどとは、
 今まで、どんな相手にも、一度たりとも思った事はなかったのに、
 何故か、忠司に対しては不思議な感情が湧き上がってしまった。
 
 思い切って、自分のただれた過去を全て書き綴った。
 そして、嫌われるかも知れないと思いながらも、ついに送った。 
 何だか、まるで裁判で判決を言い渡されるのを待つ被告のような心境だった。
 いや、そんな体験はないのだが・・・。

 忠司からの返事が来るまでの長い時間が、訪れようとしていた。

 


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