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三話
「ああんっいやぁーーイッちゃうっっ・・イッちゃうよぉ!」

ズチュッ、ズチュッと粘膜をかき回す音が部屋中に響き渡る。

さっきから佳境に入り始めたアダルトビデオが不必要なBGMへとなっていた。

「・・・なぁ抵抗しないわけ?そんなトロンとした目ぇして。」
ハッと我に返った。
「ち、違う!」
「違うって何?俺が手首押さえてたのなんて、最初だけだし。今のお前、全然力入ってないよ。キスだって・・・ノリノリだったじゃん。」

そう言われると反論しようが無くて、自分でもどうしてしまったのかと唖然とするばかりだった。
沈黙してしまう光をよそに、拓海は押し倒していた光を起こし、向かい合って座った。
「今日だけ、お互い気持ちよくなるっていうの、どう?」
「え・・・どういうこと?」
「だから、オナニーしあうってことだよ。お前が俺の握って扱けよ。俺がお前のしてやるからさ・・・いいだろ?」

光の返事は聞かぬままに、抱き寄せられた。キツく抱きしめられて耳にキスされる。ピアスだらけの耳を甘噛みされて、歯と金属が当たる音がカチカチと響く。少し収まっていた疼きが、またこみ上げてきた。

「んっ・・・」
「何も言わないってことは、いいんだな?」

耳元で囁かれた。体がビクッと跳ねる。その様子を面白がるように、拓海は低く笑った。
「お前、彼女いるんだろ?皆知ってるぞ。ヤリまくってるって聞いたけど、どうなんだろーな。その反応。お前が女とヤッてるなんて今想像できねぇよ。」

もう一度向き合うと、シャツのボタンを外された。拓海の長い指が、プチン、プチンと一個ずつボタンを外すのを、無言で見つめている。
これから起ころうとしていることを、理解していないわけじゃない。
でも、嫌だと思えない自分がどこかにいた。

「・・・肌、白いなぁ、こんな細い腰・・・」
すっかり肌蹴たシャツの隙間から、わき腹をつーっとなぞられる。また体が跳ねてしまう。拓海の肩に手を乗せて、与えられる快感を受け入れる。

小さな胸の突起を摘まれて、思わず上擦った声が漏れた。
「んっ!いやぁ・・・そ、こは・・あんっ」
「感度良過ぎなんじゃねー?ほら。」
そう言いながら、光の下半身に手を伸ばす拓海。
「光、男に触られてこんなにしちゃってる。下着濡れてんじゃん。」
「う、うそだっ・・・あぁっ!」

ジッパーが下げられて取り出された分身はもう、鈴口から蜜を溢れさせていた。その蜜を長い指に絡めながら、拓海がゆっくりと扱き出した。

「おっと・・・俺のは光、お前がしてくれよ?」

胡坐をかいてスラックスから取り出した拓海の雄芯はそそり立つように上を向いていた。自分に欲情しているのか、アダルトビデオでこうなったのか、今となってはどちらか分からない。
光は言われた通り、脚を開いて拓海の分身と自分の分身が向かい合わせになるようにした。そしてお互のモノを握り合う。

「やべー・・・ほんっと今のお前の顔、ダイレクトにここにクる。」
「な、なに言ってんだよっ!」
「手、動かせよ・・お前のもうヌルヌルだー・・」
「あぁっん!・・ふっ・・うんっ・・」
「あー気持ちぃー・・っ・・はぁっ・・」

向かい合って扱きあう。先走りがヌルヌルと光の手を汚す。扱くたびに硬さを増していく。同じように、拓海の手も光の先走りでテカテカと光っている。
実は彼女にフェラしてもらったこともある光だったが、今ぎこちなく、施されている手淫のほうが、もっともっと感じていた。

「あぁっも・・う・・」
「イキそう?イクならイクって言えよ。じゃないと手、止めちまうぞ?」
意地悪なことを言われて閉じていた目をキッと開けて拓海を見据える。
だが、その拓海の顔にも余裕は無く、自分の手が与える快感に酔いしれていた。それを見てしまった途端、羞恥が何処かに消えた。

ドクンドクンと心臓が鳴っている。
「あー・・俺のほうが先とかナシだぜ・・そろそろもたないっ・・光っ!」
光の手の中で、一層膨張したモノがビクンと震えた。
拓海の手の中でも同じことが起こる。
「俺もぉっ・・・イクっ、出ちゃぁっ・・ん!!」

はぁはぁと乱れた息遣いだけが、部屋に響く。
すでにアダルトビデオは終わっていたようだ。静かな部屋に二人の出し合った
欲望の匂いが漂う。

すぐそばにあったティッシュを取る余裕すら無かった二人は互いの手の平に出し合っていた。

「・・手がベタベタだな。」
「・・だな。」
顔を見合わせてプッと小さな笑いが起きる。
「ティッシュ。拓海の後ろにあるから・・・」
「お、ここかよ。近いじゃん。」
「だってそれ、俺があっちから持ってきたんだろーが。それなのにお前が押し倒したりするから・・・」
「ん、そうだよなぁ・・ていうかさ、男かよ?とか言ってごめんな。お前は俺と同じモノがついてる男だけど、何ていうかな、その、色気ってーの?それが半端ないと思う。それでつい・・・」
「今日はアダルトビデオ見て暴走しちまったんだろ?ったくしょーがねーな。
お互いスッキリしたんだから、もう忘れろ。」

ティッシュで手を拭いて、コンビニの袋に入れた。拓海が拭いたティッシュも
まとめて入れる。リビングのゴミ箱にそのまま放置できる代物じゃない。

二人はとりあえず下半身の服を直した。

「忘れろ、か。」
立ち上がってスラックスを直しつつ、ポツリと拓海が呟いた。
「こんな事、忘れられんのかな・・」
真剣な眼差しが向けられて、顔が熱くなった。目線を逸らして横を向いたのに
、シャツを捕まれて前を向かされる。

「留めてやる。」

また何かされるのかと、ドキっとした自分を打ち消したくなった。
立ったまま外されていたボタンを閉めてくれる。丁寧に、ゆっくりと。まるで時間を惜しむように。

「よし!これでいーな。」
「・・なぁ。何で一番上まで留めるわけ?」
「いーんだよ。光はいつも前開けすぎなんだって。」
「だからって一番上は無いだろーよ。」

結局、手を洗ってから光は自分の部屋で部屋着にさっさと着替えてしまった。
俺が留めてやったのにー、と拓海はブーブー文句を言っていたが、脱がせたのは拓海自身だという事は棚に上げっぱなしだ。

「さて。そろそろ帰るわ。長居しちまったな。AV回収回収・・・」
レコーダーからディスクを取り出して、ケースにしまう。それを鞄に放り込んだ。
「あ、拓海、この大量のお菓子どうするよ?」
「あー、開けてないのもいっぱいあるし、食っといて。光、もう少し食べたほうがいいよ?腰とか細っそいから・・さ!」

目線が下へ移された。

着替えた大きめのジャージは、腰骨までズリ下がっていて、辛うじて骨に引っかかって止まっている。細いウエストとおへそが、チラリと覗いていたことを遠まわしに指摘された。

「ば!バカ!もう、そういうのはナシだって言っただろ!お菓子はありがたくもらっとくから!」
「そ?じゃいっぱい食べろよー」

リビングを出て、廊下から玄関へと向かう。
「じゃ、お邪魔しました。」
「下まで行くよ。」
「そ?サンキュ。」

普通の友達同士の会話だった。

エレベーターのボタンを押して、すぐに10階へ到着した。乗り込んでドアが
閉まり、1階のボタンを押すと同時に、拓海は光を抱きしめた。

「ちょっ!お前、誰か乗ってくるかもしれないし・・!」
――ってそうじゃない!!!

「・・もう少しだけ・・」
掠れる声が耳に響く。肩を掴まれて一瞬引き離されたと思ったらー・・
キスされた。

後頭部を掴まれて、反対の手は腰を引き寄せる。どうしていいのか分からずに
空を切る光の両腕だったが、深くなる口付けとともに、拓海の背中に回されていた。

今何階まで降りているのか分からない。

拓海の舌が光の舌を追いかけては絡みつく。歯列をなぞって、上あごをつつかれる。何度も向きを変えながらされるキス。飲み込めなかった唾液が、光の形の良い唇の端から垂れた。腰を掴んでいた拓海の手が、着替えたTシャツの裾を捲り上げて、胸の突起に触れた。

「んぁああっ!」

ぷはぁっと口を離して漏れた声は、言葉にはならず、ただの喘ぎだった。

「おっと、やべ!」
拓海が急にいつもの調子に戻ったと思ったら、チン、と音がなって1階に到着した。光は焦って口元を拭った。

ドアが開いても、誰も居なくて心底ホッとした。

「お前っ・・・何してんだよ!!!」
「え?何が?」
「何がって・・!!今、キスしただろ?!」
「それがどーかしたの?」
「お、おまっ、どうかしたって・・男同士でこんなのオカシイだろ・・」
「今更ぁ〜」
ヘラヘラっと受け流す拓海に、はぁーっとため息が出た。

「もーいーや。じゃ、明日ライブビデオ持って来いよ!」
「あ、そうだった。わかったよ。初回限定モノなんだからな。楽しみにしとけよ!」

ニカッと笑って、拓海は自動ドアを抜けて外へ出て行った。
明日、学校でまた会う。あの様子だと気まずくなることはなさそうだった。

またエレベーターのボタンを押す。乗り込むとキスの余韻が舞い戻る。
何であんな。
まるで恋人同士みたいなキスだった。
アダルトビデオを見ていたから。性欲の暴走。そんなんじゃない。
別れる時間までも惜しむような長いキス。



部屋に戻っても、一人きりの光は考えることが限られてしまう。
どうしても今日のことばかりが、頭を支配していく。

触れられた部分が甘く、熱く疼いていた。






――キーンコーンカーンコーン






随分、鮮明に思い出していたものだ。

しかも授業中だというのに、こんなことばっかり考えていたなんて、自分でも呆れてしまう。ノートは真っ白で何一つ、書かれていない。


教師は早々と教室から去り、急に教室が騒々しくなる。
一つ、伸びをしてから欠伸をすると、右斜め前から、賢吾がこっちへ来るのが見えた。

























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