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二話
教室へ戻ってきた光は席に着き、ボーっとしていた。授業はつまらない内容で
全く頭に入ってこない。取りもしないノートを広げて、シャーペンを回した。

自分がこうなったのは何時からだったのだろう。


中学2年の冬、初めて彼女ができた。光はまだ今よりも背が10センチは低くて、成長途中といった感じだった。彼女のほうはもう、体は立派に女性といった感じで、ふっくらとした胸のふくらみと、つやつやした長いロングヘア、パッチリした二重が印象的な美人だった。

特別に好きだという感情を抱いているわけでは無かったが、学校でも1、2を争う人気者の彼女から急に告白されて、断る理由など当時の光には全く無かった。身長160センチ台前半の光と彼女はほとんど体格が同じで、並んで歩いていると女の子同士のようだった。

真っ白な肌に痛々しいほど開けられたピアス。瞬きすれば風が吹いてきそうな長い睫毛。スッと通った鼻筋にぽってりした唇。顔立ちは今と変わらない光も、成長途中の中学時代は今よりずっと女の子っぽかった。

後から聞いた話だと、光に告白したくても出来なかった女子は山ほどいたらしい。光の横に並ぶことを考えると、自分のほうが見劣りしてしまうと考える女子が多かったようだ。

そんな中、自分の容姿に絶大な自信のあっただろう彼女だけが、サラリと光に告白してきたのだが、当時の光は知る由も無い。

大人びた彼女に流されるまま、初体験をしたのは中学3年の春だった。
きっと自分が初めてじゃないと、ひしひしと感じた。それでも別に気にならなかった。思春期の体に、初体験の快感はまるで麻薬のように浸透してく。
その快感の虜になっていく。お互い若い性を貪るように交わった。

体は快感の虜になっていても、心は何故か雲を掴むように空虚で空っぽのように感じていたが、まだその理由は分からなかった。

そんな時、あることがきっかけで自分の性癖に疑問符が浮かんだ。

光の家は母子家庭で、母親は光を育てるために仕事に奔走し、家にはほとんど居なかった。そこに目をつけたクラスメイトが、光の家でアダルトビデオを見ようと言い出したのだ。光とは趣味が似ていて、ロック系の洋楽が大好きな、榎本拓海<えのもと たくみ>という男。

明るい茶髪を光と同じようにツンツンさせていた。身長も当時の光より5センチは高い。バスケ部に所属していて、体格もしっかりしていた。
そこそこモテるのだが、お人よしな性格で、お笑い担当になってしまうんだと、よく嘆いていた。

彼女と蜜月を過していた光は今更アダルトビデオなんて見ても、という気持ちはあったものの、どうしてもと拝み倒されて承諾したのである。
もちろん、買おうと思っていたロックバンドのライブDVDをくれるという、オイシイオマケに目がくらんだのもあった。

そこまで思い出して、光はシャーペンを動かした。

時計を見ても、まだ授業の残りは30分はある。その先を思い出したく無くても、自分でアレをする時、いつもこの出来事が頭に浮かぶ。何回リピートしたか分からない。彼女との甘い関係などもう、忘却の彼方だというのに。


「いや〜マジサンキュな。一人暮らしの兄貴の部屋から一枚拝借したのはいいんだけどさ。俺んち自営業でいつも親いてよぉ。」
光と拓海はマンションのエントランスでエレベーターを待っていた。
チン、と音が鳴って、エレベーターが1階へ到着する。二人はそこに乗り込み、10階を押した。
「いーって。今日は上映会ということで。てゆーか色々買いすぎじゃね?」
マンションまで帰ってくる途中に拓海はコンビニでお菓子やらジュースやら買いまくっていた。二人で食べるには明らかに多すぎる。

「いーんだよ。場所提供者にはこのくらい♪また違うの持ってこれたらさ、頼むかもしんないし!」
ニカッと悪びれのない笑顔で微笑まれて、そういうことね、と光は納得した。

そうこうしているうちに10階へ到着し、光の家に入った。
リビングへ案内すると、感激の声が上がる。
「スゲー!このテレビ最高じゃん!」
60インチの大画面薄型液晶テレビに、拓海のテンションはマックス上がっている。

「母親が映画好きで。家でゆっくり見たいからとか言って、こんなデカイサイズになったんだよ。俺はこれでライブビデオ見るのが最高なんだけど。」
「そっかーお母さん、グッジョーーーブ!!!はいはい、光くんはその辺座って。お菓子をどうそ♪」
光の家だというのに拓海はいそいそとお菓子を出したりその辺にあったクッションを手渡したりと、ノリノリだ。
「拓海・・・落ち着け。グラス持ってくるから。」
その様子にため息をつきつつも、笑える。グラスに氷を入れて、買ってきたコーラを注いだ。ポテトチップやポッキーなど大皿に盛り付ける。AV上映パーティーかよ、と心の中で笑いをかみ殺した。

「いよっし!準備万端、では再生!」
「いちいち気合入ってんなぁーま、いっか。スイッチオン!」
拓海のハイテンションに少し乗せされて、ノリも普段と変わりつつ、アダルトビデオは再生された。

前半はくだらない小芝居がかった男優とのやりとり。二人は無言でお菓子を食べつつ、テレビを見つめる。

徐々に女優を纏う服が少なくなっていく。

「・・・いやぁっ・・・んんっ・・だめぇ・・・」
ハアハアと息が上がり、身悶える女優のあられもない姿が大画面に映る。

大画面といえども、彼女と実践ばかり踏んでいた光の分身は反応しつつも、心はこんなもんだよな、と静かだった。チラ、と拓海を見てみた。

胡坐をかいて、股間部分にクッションが乗せられている。

ふと、画面に集中していた顔がこっちへ向けらる。
少し上気して、さっきまでとは違う顔がそこにはあった。
何故か心臓がキュッと締付けられた。

「・・・なぁ。ティッシュほしーんだけど・・・」
ヘラヘラっとしながら、申し訳なさそうに言い出す拓海はいつも通りの姿に戻っている。さっきキュッとした心臓が憎い。

「お前、ここで抜く気かよー・・・人ん家のリビングだぞ?」
「だってさー・・・これ、どうするよ?」

そう言ってクッションが除けられる。制服の上からでも分かるソレは硬く立ち上がって主張していた。

「・・・しょーがねーなー・・・」
ダイニングにあったティッシュのボックスを持ってきて手渡した。
「俺、自分の部屋行ってるからさ。ビデオ終わったら呼んで?俺が居る前だと気まずだろ?」
気を利かせたつもりだった。笑いながら拓海の隣から立ち上がろうとした瞬間、強い力で腕を掴まれる。

「ん?どした?」
訝しがる光に、熱の篭った目線が重なった。
その目に射止められて、心臓がドクン、とさっきよりも大きな拍動をさせる。
「・・・光・・・お前って本当に男?」
「は?お前なに言って・・・っ・・!何すんだよ!」

ドサっと覆いかぶさられて、フワフワのラグの上へ押し倒された。
太ももの上に硬いモノが当たっているのが分かり、顔が熱くなる。

「だってさ・・・お前って細いし色白いし、誰より美人じゃん。クラスの女子もみんな、お前の隣はツライって言ってるよ・・・」
顔が段々近づいてくる。光の細い首筋に拓海がフワっと触れるか触れないかのキスをした。

「んんっ・・・」
甘い声が漏れてしまった。
「やべー・・・イイ匂いがする・・・もう止まんねぇよ・・・」
欲情にかられて掠れた声が耳元で囁かれた。体中が心臓になってしまったみたいにドクンドクンと波打ってうるさい。抵抗したいのに、体に力が入らない。

拓海の左手が光の中心部分に触れてきた。
「あー・・・勃ってる・・・やっぱ男なんだ・・・AV見て興奮してたの?」
「るせっ・・・ふっ・・んんっ・・・」

言葉は途中で遮られる。首筋に埋もれていた顔がドアップで目の前にある。
キスされていた。決して上手いキスじゃない。でも、光を求めて貪るように口づけられて、徐々に光は煽られてきた。背筋がゾクゾクしてくる。

「うんっ・・・はぁっ・・んうっ・・」

されるままだったのに、気づけば舌を絡めあっていた。お互いの口腔内を行き来する生暖かい舌使いが堪らない疼きを光の中心に与えてくる。

ピチャっと水音を立てて、ゆっくりと口が離された。名残惜しげに半開きになった口元から、飲み込めなかった唾液がタラリと垂れて、ひどく淫猥になっていることを光は気づいていない。










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