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邂逅
凛紅は長い廊下を足早に進んでいた。
廊下には人一人の姿も見えず、音もない。
完全なる静寂。

「ふふっ」

だというのに、凛紅はこの状況に鈴を転がすような微笑を浮かべる。
何を恐れることがあるというのだろうか。
白夜は奪われた。
―それがなんだというのだ。
凛紅には新たな強大な力を授かった。
あとは淵様のもとへ向かうだけ。
そして、その肝心の居場所も血を通じてなんとなく分かっている。
恐れるものなどなにもない。
ただ突き進んでいくのみっ!


そう、例外はない。
この廊下を曲がった先にいるあの壊れた女だって―





凛紅が角を曲がった瞬間、怨念にも似た強烈な視線が突き刺さった。
その視線に動じることなく見返してやると、視線の主は忌々しげに舌打ちした。
しかし、それも一瞬、女は苛立ちを隠すと、明らかに作られたと分かる笑顔を向けてきた。

「ごきげんよう、日向さん」

その声には明らかな侮蔑と嘲笑が込められていた。
凛紅はそれを聞いて、それに相応しい返答を返す。

「こちらこそごきげんよう、東堂さん。ところで私の(・・)淵様を見かけませんでしたか?」

凛紅の言葉に春奈の眉が吊り上がるのが分かった。
春奈が淵様の事を慕っているのはずいぶん前から知っていた。
まったくもって身の程知らずの雌豚だ。
あの犬だけで我慢しておけばいいものを・・・・・・。

だから―

「誰が・・・・・・誰がお前ものだっ!」

激昂する春奈。
凛紅はそれを冷ややかな目で見つめている。
その目には憐憫さえ宿っていた。
凛紅は今にも飛びかかってきそうな春奈に忠告する。

「私の能力は発現したばかりでしてまだ細かい制御が効きません。今なら見逃してあげますから逃げてもいいですよ」

それは挑発にも似ていた。
思った通り春奈は怒りをさらに深くする。

「ふざけるなっ!殺してやるっ!貴様、今すぐ殺してやるっ!」

何の策もなしに春奈は特攻してくる。
さすがは鍛えられた兵士だ。
そこいらの半端者とは訳が違う。

あぁ、でも・・・・・・。
そんな攻撃は通らないのだ。

「まったく・・・・・・そんなだから」


―死ぬ事になるんですよ。

凛紅は甘美な腐臭を感じながら、そう呟いた。
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