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四 水魚の契り
 真夜中に鐘が鳴った。

 鈴音の周りの民家から人が出てきて怒鳴った。
「火事じゃ!」
「どこじゃ!」
「高清水の村じゃ!」
 鈴音は家を飛び出した。父は年老いた主と高畠の亀岡文殊堂に連歌の会に出て不在だった。

 高清水の村に走った。
 庄屋とその周りの家々に炎が上がっていた。すでに手の施しようが無い。焼け出された庄屋の家族が泣きわめいていた。

「まだ、ややが・・・!」
 母親が気狂きちがいの様に炎に包まれた家に入ろうとし、家族に押し止められていた。鈴音は近くに井戸がないか探したが無かった。

 意を決して炎の中に駆け込もうとした時、焼け落ちる土間から人影が走り出てきた。大事そうに何かを抱えている。
「でか!」

 でかの髪の毛は燃えて無くなり、背中には火が点いている。鈴音は小袖を脱いででかを包んだ。
 そしてでかがその胸から取り出したものは、元気に泣き続ける赤子であった。
 喜び我が子を抱きしめる母親と乳母は、やがてまだ体から煙を上げて座っているでかに両手を合わせた。

 庄屋が怒鳴った。
「こいつは非人じゃ!手を合わせるなどもっての外じゃ!」
 鈴音が怒りの声を発する前に、母親が怒鳴った。

「誰がおらの子を救っただ!おめえは人か!もう縁を切るだ!」
 庄屋は吃驚して膝を突いた。


 鈴音とでかは縄張りの岸辺に二人でいた。
 心配して送ってきた源太達と非人の子等は安心させて帰らせた。彼らは薬を持ってきて、火を熾してくれた。焚き火の明かりで鈴音はでかの火傷に塗り薬を塗っていた。
「・・・何て危ないことをするんじゃ!お前は」

 でかは髪の無い顔でにっと笑った。
 鬼が嗤った。
 なんと優しげな顔で。

「・・・おらあ・・・ややが大好きなんじゃ」
 鈴音の胸はどきんとした。
「でか・・・」

 鈴音はゆっくりと顔をでかの顔に近づけた。そして口を合わせた。
 唇を離すと、つつと唾の筋が焚き火の炎に煌めく。でかはぽかんと口を半開きにして、鈴音を見ていた。

「あすらさが俺の口を舐めた・・・」
 でかは恥ずかしそうに下を向いて笑った。
 鈴音はでかを立たせ襤褸を脱がせた。そして自分も小袖と袴を下に落とす。

 仁王と阿修羅。

 彼らは知るよしも無かったが、遠い奈良の古都のお寺には、美しいおのこの姿をした阿修羅像が有るという。

 鈴音は髪を解いた。その焚き火の炎に揺らめく美しさに仁王は見とれた。

 仁王の手を引いて川の深みに誘った。
 岸の岩の前に、仁王の腰までの深さの砂どこがあった。阿修羅は胸の下まで水に浸かっている。

 阿修羅が仁王の胸に取り憑き、顔を上に向けた。仁王は無意識に阿修羅の腰を抱き、顔を下げる。再びその二つの口が合わさった。

「でか・・・俺のややが欲しいか?」

 でかはぽかんと阿修羅を見つめる。

 鈴音は仁王の魔羅を掴んだ。しかし、知恵遅れの仁王は性の欲は出ないらしい。
 鈴音は息を吸い込むととぷんと水に潜った。そして仁王の魔羅を口に含み、ふぐりをまさぐった。

 でかは背を岩に押しつけて息を荒げた。今まで味わったこともない快さが、逞しい腰の周りを駆け巡った。冷たい水が仁王の性腺を刺激する。

 鈴音は膨張する魔羅に驚いた。
 怒張してからだったら、鈴音の小さな口には入らなかっただろう。ようやく亀頭を舐め、舌で鈴口をまさぐった。

 顔を水面に出すと仁王が切ない目で阿修羅を見ていた。
 だがどうやって良いか分からないらしい。

 鈴音は仁王を岩から引き離し、反対に自分が岩に胸を付けた。
 仁王の魔羅を掴み自分の蕾に導いた。
 力を抜き、それを受け入れる。排便の時の様な排泄感。だが今は異物を中に入れているのだ。

 仁王も本能的に蕾を穿とうとし出した。力強い手が阿修羅の腰を掴んだ。阿修羅は一瞬逃れようと腰を引く。しかし仁王はそれを許さず制した。
「あう!」
「あすらさ!」
 長大な肉棒がずるずると鈴音の体内に分け入る。腹の奥に突き当たる。
「ん・・・!」
 鈴音の声に仁王は狼狽える。
「あすらさ!苦しいだか?!」
「つ・・・続けろ・・・」

 鈴音は首を回して仁王の口を吸った。思わず舌を差し込み、絡ます。
 仁王の手を腰から二つの乳首に誘った。

 遂に仁王の本能が蘇った。

 腰を徐々に律動させ、突き入れる時、鋼鉄のように固くする。
 鈴音の頭に火花が散った様だ。仁王は抜ける寸前まで引き出し、蕾のすぐ奥の秘所を目掛けて突いた。乳首をぐりぐりと嬲りながら。

(ああ・・・俺は・・・本当におなごになったのか)
 仲違いを止めさせるために、計略ででかの女になったと言った。・・・だが、俺は今、本当の女のように男の魔羅を肉体に受け入れ、そしてよがっている・・・

 俺を美しいと言う輩はたくさんいる。
 親父も昔、そう言われたと聞いた。女ではなく男が言い寄り、側に置きたいと願ったと・・・俺も男に愛される運命さだめなのか・・・

 知恵遅れの仁王は、幾度と無くその精を鈴音に注いだ。熱く滾る子種を鈴音は感じ、受け入れた。最後の絶頂を味わいながら、鈴音の意識は薄れていった。
 その茎から白い筋が途切れなく清い川の流れにたゆたうた。



第一部 了
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