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馬鹿げたジンクスのために処女膜を破られるなんて、まっぴらごめんなルティは必死に逃げ回る。最初はグレイが有利なように思われたが…。
第四十九話「おいかけっこ」
 ルティは船の中を走り続けていた。あちこちにゴーレムを見かけるが助けになりそうにもない。
 とにかく船の中は広かった。ダンスパーティーのできる広場のようなものから、土産物を売る店が連なっている通りもある。
 劇場もあるのには驚いた。ルティはここの椅子の間を縫うようにしてホールを進んでいく。

 一方グレイは非常階段を使ってルティの気配を探していた。これも性の迷宮に潜る前まではなかった能力だが、これは腕輪を使わなくても自然に身についた能力だった。ルティのことに意識を向けると、大体の方向ならわかるようになったのだ。
 どうやらルティは3階にいるらしい。宝珠をいくつも腕輪の中に取り込んだせいか、大抵のことは1度見聞きしただけで頭に入るので、案内板や各階の表示を見て、どこに何があるのかをほぼ把握したグレイは、肉棒を上下左右に揺らしながら階段を降りていった。

 ルティはどこか隠れていられる場所を探していた。隠れていて、すぐに出口に駆け出せる場所なら尚いいのだが…。
 あれから追いついてきたグレイにシャツと靴を脱がされてしまった。これで上半身は素っ裸だし、足は靴下だけだ。船の上は観光用なので隠れる場所はあまり多くない。隠れられたとしても1時間の間逃げ回るのは難しい。それは商店街に隠れていてあっさりとグレイに見つかった経験から学んだ。
 だがこれだけ大きい船となると、当然ながら飲食物や販売用の商品を保管している倉庫が必ずどこかにあるはずだ。そこを探せばいい。

 そういう倉庫だと鍵は掛かっているのがセオリー(お約束)だが、商店の扉が全て開いていたことからして、きっとこれから向かう倉庫にも鍵はかかっていなくて入れるはずだ、とルティは考えていた。
 そしてその読みは当たった。開けっ放しにはなっていないものの、力を込めて押せばちゃんと開く。中に入ったルティは大小さまざまな箱がぎっしりと詰められていることに驚いた。
 確かにさまざまな商品を扱っているのだから、いろいろなサイズの箱があってもおかしくない。細長い箱やルティがすっぽり入れるだけの大きな箱など、まさに千差万別だ。
 これならいろんな箱の陰に隠れていれば大丈夫かも、とルティは思った。

 とりあえず2階に上がる階段を上って窓から外を見る。もちろん2階もいろんな箱が置かれている。中にはきちんと置かれていないものがあったりして、隠れるにはうってつけの場所だった。
 やっと落ち着いたルティは腕時計を見た。まだ30分もある。そして窓から倉庫の並ぶ地下空間を見る。どういう仕組みなのかわからないが、そこかしこに電灯が灯っており、さながや夜の倉庫街のようだ。

 そこへグレイがやってきた。すぐに窓から離れて、そっと覗き込むルティ。グレイは正面の倉庫へ入っていった。ドキドキしながら見ていると、すぐに戻ってきてルティのいる倉庫へ入ってきた。
 1階をざっと2分ほどで探すと、今度は2階へ上がってきた。
 船長帽をかぶって服はおろか、下着を全く身に付けていないグレイは勃起した肉棒をブラブラと振りながらゆっくりと2階を探査している。
 ルティはグレイが奥へ行くのを確認すると、そっと移動しはじめた。今のうちに階段を降りた方が見つからなくていい。これも隠れたままやり過ごす方法で失敗したので、グレイが近くを探している間にさっさと遠くへ隠れながら逃げる方がいいとルティは思い直していた。
 グレイは奥を探しているようだ。この機を逃さず、ルティはそろそろと階段へ向かい、注意深く階段を降りていった。
 幸いなことにグレイから靴を脱がされたので、足音を立てる心配はない。
 それから隣の倉庫の扉を開けて、さらにその正面の倉庫の扉も開ける。これでグレイはどっちに自分が入ったのかわからないだろう。
 ルティはずっと奥にある倉庫に入った。ここは洋服を主に扱っているらしい。さまざまな種類のマネキンが並んでいる。大人や子供、老人のマネキンまである。
 そして着ぐるみも多数存在した。箱からはみでた衣装の一部が見える。ここの2階へ行くとまたマネキンがずらりと並んでいる。何だか気味が悪いが我慢して窓まで移動する。
 グレイはそこらの倉庫を片っ端から調べているようだった。あと20分。
 ルティはそのまま待つことにしたが、現実は甘くない。

 グレイがルティのいる倉庫に入ってきたのだ。そのままじっとして人形の陰に隠れているルティ。グレイが動いてルティも位置を変えていく。
 
「おかしいな。ここにもいないのかな?」

 ボリボリと頭の後ろをかいて倉庫を出て行く。そのまま5分ほど経ってルティはその倉庫から少しだけ頭を出してキョロキョロと外を見回した。
 だが誰もいない。ホッとしたルティはさらに地下へと移動するために走り出そうとした途端に、誰かに腕を摑まれた。
 倉庫の横に積まれていた樽の陰から現れたグレイはルティの半ズボンを脱がしてしまう。
 ルティはすぐに逃げ出した。すでに精神・肉体の両方が疲れていたが、あんな痛い思いなんかしたくなかった。
 それからルティは地下へ移動する道の途中でまたグレイにつかまって靴下を脱がされた。後はパンツ1枚しか身に付けていない。
 だが残り時間はあと12分。ルティは地下の最下層部の未整理区画へと移動した。
 ここはさまざまな荷物を運ぶ道具やゴミが置く予定の場所である。乗客が2人というせいかほとんどゴミは置かれていない。薄暗い天井には照明がついているが、それでも明るいとはいえない。
 あちこちにいろんなガラクタが置かれている。ルティは木箱の詰まれている山を登っていく。これなら父でもうかつに手が出せないだろう。何故ならこの山、誰がやったのか知らないがかなりいい加減な積まれ方をしている。だからこの上で暴れたりしたら、たちまち崩れ落ちてしまう。
 しかしルティの思惑はここでじっとしていることではなかった。ここを見たときから、絶対にグレイには手出しできない場所を見つけたのだ。
 ルティは慎重に足を動かして木の箱の山を登る。そして登頂部に登ると、今度は手すりにつかまって通路へと降りる。別の場所へ移動するための扉が少し先にある。
 おそらくここからいろんなガラクタなどを捨てるのだろう。あるいは上から下で作業する者を監視するためだろうか。
 ルティはその手すりの行き止まりまで行くと、フェンスを乗り越えて更に先へ進む。そこから先はまだフェンスが作られていない。辛うじて人一人が通れるほどの幅の足場があるだけである。
 きっとこの天井近くはフェンス(手すり)が張り巡らされて作業員が一周できる予定だったのだろう。
 それも時間が足りなかったのか、手抜き工事なのかはわからないが、フェンスが設置されているのは四方の内の一辺までしかない。ルティの行く先にはやはり扉があり、そこからも出入りできることがわかる。
 だがルティはそこから逃げるのが目的ではなかった。こうしてこのままここに立っていればそれでゲームクリアだ。
 
「なにやってるんだルティ! そこは危ないぞ! 早く降りてこい!」

 下からグレイが叫んでいるが、ルティは無視した。あと5分待てばそれでいい。何を言われても無視し続けていれば自分の勝ちだ。
 
 壁にもたれかかっているルティをグレイは顔をしかめて見ていた。腕輪の力を使わなくてもあの程度の高さならジャンプできそうな気がするが、試すにはあまりにも危険だ。
 空中を移動するアイテムもあるが、今は身につけていない。それにそんなものを今まで使っていなかったのだから、ここで使えば反則だ。
 しかしルティの生命には代えられない。グレイは8メートルほどの高さにいるルティの真下をウロウロするしかなかった。こうする間にも時間は経っていく。腕時計を見るとあと1分でゲームは終わりになる。グレイはまた上を見上げた。
 ルティはじっと壁にもたれかかっていたが、いきなり前のめりにぐらりと壊れた人形のように倒れた。

「危ない!」

 真下にいたグレイは落ちてくるルティを受け止めることに成功した。どこにも怪我はない。ルティは呆然としてたが、泣き出してしまった。
 グレイはルティのパンツを優しく脱がせて言った。

「よく頑張ったなルティ。だが…悪いがゲームオーバーだ。正直、ここまで頑張るとは思えなかったぞ?」

 泣き続けるルティをグレイは優しく抱きながら、甲板に出た。夜風が心地よく感じられる。
 ルティが泣き止んでいるのを確認すると、今度はブリッジに移動した。
 かくれんぼもどきの追いかけっこは終わった。ルティは一生懸命頑張ったのだから何が起きても受け入れようと思い、素直にグレイにしがみついていた。
やっぱりでかい船だけあって、ゴミとか置く場所もちゃんとあります。でも完全には整備されていない所もあったりして…。グレイは知っていたけど、目立たないところなら多少未完成でもいいや、と思っていたに違いありません。


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