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第二話「グレイの涙」
 屋敷に戻ったルティは、そのまま食事をするべくホールへと向かった。
 やたらとでかいテーブルに着くと、すでに用意されている料理を片付け始める。グレイが帰ってきていることは知っていたが、知らなかった振りをすればいいだけのことだ。
 そもそもルティはグレイが好きでなかった。
 彼女はもともと両性体だった。つまり生まれたときから男女両方の生殖器を持っていたのである。だがルティが7歳のときに高熱を発して倒れた時があった。
 そこで当時高名な医者に診てもらったところによると、ホルモンの安定バランスが狂い、暴走する病気ということだった。原因はわからないが、このような奇病が稀にあるのだという。つまりこのままではどんな薬を飲んでも完治しないので、男か女のどちらかを選んでホルモン剤を定期的に投与するしかない…ということだった。
 
 医者によると当時の技術では女性器の削除は不可能だったが、男性器なら切除できる。早く切除しないと命に関わるということでグレイは医師のアドバイスを受け入れてルティを女の子にしてしまった。
 こうして睾丸と男性器を取り除かれたルティは自分を、女の子として扱う父が嫌いになってしまった。もちろん肉体的には女性になったのだから仕方ない。
 それでも女の子らしくしろ、と言われるのはいい気分がしない。洋服ダンスに女の子が着る服を勝手に沢山入れるのも腹が立つ。
 何よりも、今まであまりうるさくなかった父が女性になった時から口やかましく言うようになってしまったということだ。半ズボンを着ているルティを父は良く思っていない。

 そして父を決定的に嫌いになったのは、ルティが学校に行っていた時に両性体だと周囲の子供達が知ってルティを苛めた時だった。苛めは日に日に酷くなり、ついにグレイが介入する事態にまで発展してしまった。
 街の有力者に人望のある(とはいっても金をばらまいたのが真相らしいが)グレイは現場を押さえるや否や、子供達の親を呼んで激しく糾弾した。
 苛めを止めるにはそれで十分だったが、グレイはやりすぎた。当時、彼は苛めをした子供達や親を糾弾しただけでは飽き足らずに探偵を数人雇って子供達のルティに対する反応を精細に調査させたのである。
 その結果わかったのは直接苛めることはしなくなったものの、彼らがルティの陰口を叩いているという事実を知ったグレイは怒り、ゴロツキを数人雇って陰口を叩いた子供達とその親を攻撃させた。幸い死者は出なかったものの、障害者として生きる道を余儀なくされた親と子供が数人出てしまったのはどう考えてもやりすぎだ。もっともグレイは証拠を残さないようにうまくやっていたので彼が訴えられることはなかったが。
 おかげでルティは完全に孤立してしまい、生徒はおろか教師さえもルティを完全に避けるようになってしまった。このためルティは学校に行けなくなってしまった。女性になった今でも学校には戻れない。父がいる限りまたいつ苛烈な報復が行われるかわからないからだ。自分がこの屋敷にいるのが、街の人々が傷つかずに済む一番いい方法だということを彼女は知っている。
 
 父のしたことは全てはルティを守るため、と頭ではわかっていてもどうしても好きになれない。
 だから父と一緒に食事をするのも最近では稀だ。そんなわけでさっさと食事を終わらせたルティは2階にある部屋への階段を上っていった。
 部屋に入ると、ベッドの上に紙切れが置かれていた。どうもメモ帳を切り離したもののようだった。書かれている内容は簡素なもので呼び出しの類のようだった。

『世界で一番愛するルティへ。明後日の午後8時に大切な事を話したいので俺の部屋に来てほしい。30分待っても来なかったら俺の方から行く <グレイ>』

 最初は無視しようかと思ったが、グレイはルティが来なかったらどうするかについて書いている。今夜にしなかったのは恐らく彼なりに配慮してくれているからだろう。
 だがルティはさっさと終わらせたいのでできれば今夜中に片をつけたかった。

 しかしメモには明後日とあるのだから今日行っても無駄だろう。ベッドにひっくり返ったルティはさきほどグレイがしていたことを思い出していた。 薔薇の花にあんなに沢山…白い液体を沢山出していた時のグレイの顔は何ともいえず、幸せで満ちていた。
 どうして白いのか。ルティは身を起こすと本棚から何冊か本を引っ張り出してグレイの出したネバネバしたしょっぱい液体について調べてみることにした。
 1時間ほど本を調べてわかったのは、グレイがしたのは射精というもので、これは赤子を作るための種ということだった。肉棒は陰茎と呼ばれて、そこを刺激すると大きくなる。これを勃起というそうだ。そして気持ちよくなっていき、それが頂点に達したときに射精する。よほど精力のある人間以外は一度射精すると陰茎はそのまま勢いを失って、また刺激しない限り勃起しなくなる。そして白い液体は精液と言われることもわかった。
 しかしそれなら何故薔薇を染めるのに精液を使ったのだろう?本当に染めたいのならペンキを使えばいいのに、とルティは思った。

 本を本棚に戻すと、ルティは物思いにふけった。
 確かにこの屋敷で生きている人間はルティとグレイだけだ。だから誰かに見られなくてもいいので、あんなことを堂々としたのだろう。
 そこでルティは壁に付いている大きな鏡に目をやった。そこには赤、青、黄色の薔薇が鏡に付いている。

 ふとルティは薔薇に触れてみた。作り物なので本物のようなてざわりではない。だが触っているうちに、その花弁が動くことに気づいた。
 右や左に回転する花弁は全ての薔薇に共通しているようだった。青や赤の薔薇をいじっているうちに、ルティは鏡がドアになっていて、薔薇はそのスイッチだということを発見した。
 30分ほど練習すると、ルティは鏡のドアの仕組みをある程度まで知ることができた。ドアの開け方やロックするやり方も覚えた。

(すごーい! これってもしかして秘密の通路ってやつ?)
 肉体的には女の子だが、思考は男の子に近いルティは開いた鏡のドアの向こう側の空間をおそるおそる観察した。やはり彼女の予想した通り通路になっているらしい。
 さらにこの鏡のドアは裏側に回っていると、向こう側(つまり部屋の内部)が見えるということだった。しかも部屋の内部からは鏡の裏側にいる者は見えない。いわゆるマジックミラーというものだ。
 興奮しまくっている自分を必死に宥めながら、ルティは部屋のドアに鍵がかかっているか確認した。続いて窓やベランダも確認する。ルティが鏡の裏の通路を探検している時に父やゴーレム達に入ってもらいたくないからだ。特にグレイは冒険者なのでドアの鍵は簡単に開けられてしまうため、ルティは補助錠をドアに二つほど付けている。簡単な作りだが内側からしか開けられないので、外から鍵を外すことは不可能だ。室内に入るにはドアを壊すしかない。
 

 全てのドアや窓に鍵が掛かっていることを確認すると、ルティは音を立てないようにスリッパを脱いでハダシで移動することにした。確かに姿は見えなくても足音で気づかれてしまうかもしれない。それからルティは、何かを見たらすぐに口元を押さえるように注意することにした。何冊か冒険小説や推理小説を読んでいると、足音や声で覗き見している人物が覗かれている者に気づかれてしまうことが多い。
 何度か深呼吸して鏡のドアの裏側に入る。念のために小型のランタンを用意した。これも事前に鏡の裏側に回って確かめてみたが、鏡のドアを閉めると隙間はなくなるので明かりでばれるということはなかった。

 それでも万一のことを考えてランタンの覆いをすぐに下ろせて明かりを遮断できるようにしておこうと決心しながら、ルティは謎の通路に入って鏡のドアをゆっくりと閉めた。これも裏側に同じような薔薇が付いている。試してみるとこちら側からも、ロックすることが可能だった。
 そこでルティは青の薔薇を回して扉を簡単にロックした。扉を横から見ると、四角い穴が三つ付いている。どうも薔薇の数だけ(つまり三つまで)かんぬきがを下ろすことが可能らしい。
 案の定、通路は暗かったのでランタンの中のロウソクに火をつけた。
 ルティは通路を歩いているうちに、あちこちにある鏡を通して室内を見ることができた。確かに屋敷の至る所に鏡は付けられている。廊下はおろかトイレや風呂場まで…。どの鏡にも薔薇が付いている。
 どういう造りになっているのかわからないが、隠し通路を通っているうちにルティは床に埃が積もっていないことに気づいた。すると誰かがここを使っている?
 と、思いいたったところでルティは小さな生き物が前方で蠢いているのを発見した。
 見ればスライムの一種、ホワイトスライムである。これは大人しくて肉は食べない。草食性だが埃も食べるので、これが掃除機の代わりに設置されて隠し通路にほこりがたまるのを防いでいるのだろう。

 ほこりが積もらないことに気づいて安心したルティは冒険を再開した。秘密の通路を進んでいると、階段に突き当たった。
 確かに現実の屋敷の裏通路なのだから上下にある階に行けてもおかしくない。
 迷ったルティは3階の父の部屋へ行ってみることにした。すでに寝ていれば安心して探索ができるからだ。

 階段を上って記憶にある父の部屋に足を運ぶ。
 だがルティの期待を裏切って父は起きていた。鏡が光っている(正確にはマジックミラーの構造上、室内の光が隠し通路に漏れているのだが)ので通路を歩いているルティはちょっと残念に思いながらも、何をしているのか気になって中を覗いてみることにした。
 部屋の中は冒険で集めた品々が所狭しと置かれている。お世辞にも綺麗とは言えないのは誰の目にも明らかだ。
 グレイはちょうど風呂上りのようで、全裸だった。逞しい体で腹筋は当然割れているし、余分な脂肪は全く付いていない。筋肉質で背の高いグレイは服を着ていない状態では精力的な印象はさらに強くなるようだった。特に今では股間から大きな肉棒がそそり立っているのだからなおさらだ。

 まさかいきなり全裸のグレイがいるとは思わなかったので、ルティはあっと思わず声を上げそうになったがとっさに口を手で押さえたので、声を出すことはない。
 タオルで体を拭いているグレイは何故か不機嫌な顔をして、そのままルティの方へと歩いていく。もしかしてバレた!?と思ったが、グレイはバスタオルをベッドの上に放り投げると、鏡の前でさまざまなポーズをとっていく。
 ルティは手で口を押さえたまま呆然としていたが、自分がいるのが鏡の裏側だということを思い出して事態の推移を見守ることにした。
 
 グレイは5分ほどポージングをすると、机の上にある書類や本を隅に重ねていく。今度は何か筒状のものをスペースのできた机の上に置いた。
 そしてグレイは脱ぎ散らかしたズボンのポケットから小瓶を取り出してムスコに塗っていった。また淫猥な音が出るかと思いきや、全く聞こえてこない。
 おかしいと思うルティを余所にグレイは肉棒を筒状の物体に入れた。
 そして腰を前後に動かしていく。左手で筒状の物を固定して、右手を腰に当てている。
 てっきりあえぎ声が聞こえると思ったのだが、まるで聞こえない。ということはこちらの立てる音も聞こえないということになる。
 考えてみれば隙間を全て埋めてしまう鏡のドアである。それじゃ声を出さないようにしていた自分は何だったのかと馬鹿らしくなったルティだが、鏡に顔を近づけているうちにあることに気づいた。
 微かだがグレイの声がする。どこから聞こえるのかとランタンを近づけてみると、薔薇の蔦から聞こえているようだった。
 よくみれば蔦の先が丸くなっている部分がある。それも二つ。これを耳に入れればいいのだろうかと思ったルティは早速実行してみた。するとグレイのあえぎ声がはっきりと聞こえてくる。

「はぁ…はぁ…ううっ、まだだ、まだ逝かねぇぞぉ…」
 ズチュ、グチュチュ…といやらしい音を立てながら何度も何度も肉棒を筒の中に出し入れするグレイ。
 薔薇園の時と同じように、グレイはだんだん腰を動かすスピードが上げていく。
 時間にして10分ほど経っただろうか。不意にグレイは肉棒を引き抜くと、そのまま鏡に向かって勢い良く射精した。
「く…ぅっ!」
 次々と鏡に向かって精液が飛んでいく。やがて射精を終えたグレイは精液にまみれた肉棒をしごき始めた。
 白くなった肉棒を高速でしごくグレイ。今度は約5分ほどで絶頂に達したようだった。鏡にまた精液が付着していく。2回も大量の精液が付いたので鏡の上半分は真っ白になっており、何が起きているのかよく見えないほどだった。
 だがそれも急速に取り除かれていく。グレイが布のようなもので鏡に付着した己の精液を拭いているのだ。それより前に自分の肉棒も掃除したのだろう。きれいになっているが、2度も射精したのに巨大な肉棒は天を突くようにそそり立っている。
 鏡を拭いているため、目の前にいるのでわかるがグレイの陰茎はどう見ても20cm以上ある。あまりの大きさにルティが驚いていると、鏡を拭き終わったグレイはそのままベッドの上にドスンと大きな音を立てて横になった。毛布を被らないで不機嫌な顔で股間を睨んでいる。
彼の肉棒は股間から胸まで伸びている。相変わらず勃起したままだ。

「ちくしょう、ほんとはこんな紛い物で自分を慰めるのは嫌なんだ! なのにこいつは全然言うことを聞きやがらないし…かといって我慢していたら勝手にでかくなって人前に出た時困るし…。くそっ駄目だ、もう我慢できねぇ!」
 やおら身を起こすと、グレイはベッドから降りて床に足を着けた姿勢で止まった。
 何をするのかと思ったらグレイは身を屈めて自分の巨大な陰茎を口で咥えてしゃぶりだしたではないか。

「ん…んん…」
 亀頭部を舌で嘗め回していくグレイ。かと思ったら頭を動かしてジュポ、ジュポと音を立てながら肉棒を刺激していく。
 目を瞑ってただひたすら自分の肉棒をしゃぶり続けるグレイ。
 その光景を前にルティはただ見ていることしかできなかった。
 
 そしてグレイはいきなり口を肉棒から引き抜いた。同時に肉棒の先端からまた白い液体が勢い良くグレイの胸板に撃ち出される。大量の精液がべっとりと付いた胸板をグレイは悲しそうな顔をしながらそばにあったティッシュ箱で拭き始めた。
 さすがにグレイの肉棒は衰えてきたようだった。それでも半勃ち状態のままだったが。

「朝起きてニ発、遺跡の中でニ発、薔薇園で一発、風呂の中で二発、さっきのオナホールと手コキで二発、そしてフェラチオしてやっと萎えてきたのか…抜いても一時的で服着ていないとすぐに勃起するし。それでも射精したくてたまらないし。こんな生活いつまで続くんだよ…助けてくれよ…ルティ…」
 
 片手で顔を覆いながらグレイは裸のままベッドに再び横たわっていた。他の照明は消して、残っているのはベッドの脇にあるスタンドランプだけが光を放っている。
 自分の名前を呼ばれて驚いていたが、続くグレイの嗚咽にも仰天した。
 今まで決して自分の前で泣かなかったグレイが泣いている。顔はルティの方からははよく見えない。片手で顔を覆っているからだ。
 だが涙が頬を伝っていくのをルティははっきりと見た。
 しばらくの間グレイは泣いていたが、スタンドランプを消した。それでもグレイは泣いたままだった。
 そしてルティは見た。グレイがランプを消す寸前、毛布代わりにバスタオルを体にかけたときに股間にあたる部分が徐々に盛り上がっていくのを。おそらくバスタオルをかけた時に陰茎を刺激してしまったのだろう。闇の中でグレイが舌打ちすると、起き上がる気配がする。次いでジュポジュポとおなじみの音がグレイの嗚咽と共に聞こえてくる。
 暗闇の中で泣きながら己の肉棒をしゃぶり続けているのだろう。それは見なくてもわかる。というより見えなくて幸いだった。ルティはいたたまれなくなって、その場を離れた。もうあちこちを冒険する気はなくなっていた。そのまま自室へ戻ると、自分に何ができるのかについて考えて見た。
 だが答えは見つからないままルティは眠りに落ちていった。
今度はフェラチオ。精力ありすぎるのも考えものですね。


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