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29:『零式』の余韻
俺はいまだ茫然として固まったままの一同のもとへと辿り着くと、涼子ちゃん胸に抱かれていたままの静の前にしゃがんで膝立ちになると先ほどの俺の失言への謝罪をしていた……

「静、さっきは俺が悪かったよ……お前がそれほど『村雨』を大事にしてくれているとは夢にも思わなかったんだ。どうかこんな馬鹿な俺を許して欲しい……」

「グスッ……解ればいいのよ解れば……今回は許してあげるけど……もし今度あんなこと言ったらもう口もきいてあげないんだからぁぁぁっ!!!」

溢れ出る涙を白くか細い腕で拭いながら瞳を真っ赤にして静は深々と頭を下げて謝罪する俺をいつもの口調で許してくれていた。

俺が静の許しを得ると次に椿姉さんのもとに赴き謝罪をする……

「椿姉さんは俺のために『飛龍これ』を作りにわざわざロンドンまで行ってたんだよね?3年ものあいだ休みもせず睡眠もろくに取らないで頑張って作ってくれたのに……本当ごめんなさい。せっかく椿姉さんが俺のために一生懸命作ってくれたのに簡単に壊しちゃった……」

俺が椿姉さんに謝ると『飛龍』を鞘から抜き芝生に軽く突き刺した瞬間、『飛龍』は柄を落下させながら刀身がボロボロに砕け散ってしまった……

「まぁ君、あなた気にしないでいいことなのっ!データはまだ残ってますし、私こそあなたの実力を測り間違えていたと思いますから……九条の叔父様の研究所でデータを再構築して作り直せばいいのですから。まぁ君、お願いですからそんな悲しい顔をしないで……」

椿姉さんの言葉を聞いて安心した俺は彼女に微笑みながらを礼を言うと神薙家、草薙家、氷室家の武系三家の当主に対して『零式ゼロしき』の感想を聞くことにした。

「椿姉さん、本当にありがとう……」

平蔵じっちゃん宗治おっちゃん、ついでに圭吾オッサン、『零式あれ』の威力は凄かっただろ?如月家の当主就任の挨拶としては上出来だったろ?」

「うぬぅ……あれほどの破壊力とはのぉ。しかもあの『紫電』をあれほど巨大に練れるものとはわしとて夢にも思わなんだわ……」

「悔しいがお前の放った『疾風』《ハヤテ》の太刀筋だが俺には残像しか見えなかった……」

「ついでとはなんだ……『飛燕ひえん』を6体だと?てめぇさっきの俺との死合でも出そうとしていたのか……」

茫然としていた三家の当主は俺の問い掛けには答えもしないで自家に伝わる奥義への感想を述べていやがった……俺はどんな時でも食いつきの早いオッサンに感心しながらもシカトされて頭にきていた俺は大声で怒鳴りながら三人へもう一度聞いてみた。

「あんた等っ!ボケッとしてないで俺の質問に答えろよっ!」

俺の大声で正気に戻ったのか3人は俺の足元に膝をつき頭を下げてじっちゃんが代表し『零式ゼロしき』の感想とこれからの方針を述べていたが……

「あれほどの破壊力を見せられては何も申し上げることはございませぬ……我ら三家は政影様を如月家の当主と認め、一命を賭して政影様を………」

「さっ、稽古も終わったし風呂にでも入るとするか。京、いこっか!♪」

「はぁ〜いっ!♪」

俺はあらたまって口上を述べるじっちゃんの言葉を遮ると、京を風呂に誘い元気な返事を聞いて三家の当主に面倒臭いといった感じで言い放った。

「『零式アレ』を使うとマジで疲れるんだ。難しい話しは後にしてくれないかなぁ……それから俺への態度だけど今まで通りにしてくれない?キモいから……」

「政影様、それでは鷲津の格式というものが保てませぬ。」

「格式か……そんなつまらんものはドブにでも捨てちまえよっ!それが嫌なら俺が今すぐぶっ壊してやろうか?まだはっきりとしないが鷲津一族に不穏な陰が近づきつつある時にそんなくだらない格式なんて気にしててどうするんだ……それにじっちゃんたちには俺を当主と認めたことを後悔するくらい働いてもらうから覚悟してなよっ!」

俺はじっちゃんが言う俺が大嫌いな言葉のひとつである『格式』について猛抗議すると鷲津一族に危険が迫っていることを教え、いつものような輕口を叩きその場を後にした。

「静、お前も稽古で汗をかいただろ?さっきのお詫びと言っちゃなんだが俺と一緒に風呂に入んねぇか?」

「なっ、なんでお詫びがアンタと一緒にお風呂に入ることなのよっ!レディに対して気を使いなさいよ……バカァ――ッ!」

「まぁ君が静さんにお詫びって言われるのなら私にも一緒にお風呂に入る権利がありますわね……ウフフッ……」

「姉さん眼が危ないわ……まぁ君が姉さんにが襲われちゃったらいけないから私も一緒に入るわっ!ついでに私がまぁ君の背中を流してア・ゲ・ル!♪」

「……楓さんは昨夜まぁ君を襲ってたくせに……私も一緒に入る♪……静さんまぁ君と入りたくないんだぁ?……クスクス……」

「雅っ!あなたいま私を笑ったわねっ!入ればいいんでしょ入れば……」

「あ〜ら静さん、別に無理して入られなくてもよろしくてよ。脱落者は去るのみですわ……オーホホホッ」

「姉さん怖い。キャラまで変わってるし……」

「つっ、椿さん脱落者ってなんですか!?私も入りますっ!」

「……チッ……椿さん余計なことを言わないで……競争率が上がったじゃないっ!……」

俺はただ一緒に風呂に入るというだけでこの人たちはこれだけ盛り上がれるのかよと思いながら苦笑しすると待たせている京に優しく彼女たちに聞こえないように小さな声で囁いた……

「いこっか?京はねぇあのお姉ちゃんたちみたいになっちゃダメだからねっ!」

「ウ……ン……」

いつになく元気がない返事をする京……俺は疑問に思いフリーズしている京の視線を辿って振り返ってみると……

「あら、まぁ君は私たちになにかご不満でもあるみたいですわね……?」

「まぁ君、私の爆乳に何か不満でもあるの……?」

「アンタねぇ……私たちがわざわざアンタみたいな馬鹿を相手にしてやってるんだから文句を言える立場じゃないのよっ!有り難く思いなさいよっ!!!」

「……ねぇ……いつになったら……死んでくれるの?……」

もういいよ……いくらオッサン達から当主に認めてもらったとしても、俺はこの一族の女性には一生頭が上がらないんだろうなと思いながら風呂場へと向かっていた……

「……そうだよぉ〜♪……まぁ〜く〜ん〜♪……アハハハッ……」

雅のヤツは俺の心を読んで毎話恒例の締めを邪魔しやがっていた……


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