警告
この作品は<R-18>です。
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30:相変わらず触り心地の良い頬だな
「瞳、忙しいところ悪いんだけど、生のおかわりをくれないか?それから朋ちゃん、ちょっといいかな?」
「ハ~イッ!すぐにお伺いいたしますぅ~♪」
「はい。只今お伺いいたします」
俺の言葉に反応した二人の言葉遣いからは王道的で厳格な教育方針をもっとうとする鷲津家、そして個人の意志を尊重しながらその成長を促そうとする如月家、両家の家風の違いというものを垣間見る事が出来る。
『それにしても瞳のやつ、いつも裕子に接客について説教されまくっているはずなのになぁ……』
そんな彼女の言動からは俄には信じられないかもしれないけど、事務処理。特に経理系の仕事を任せたらその処理スピードや精度は勿論の事、法的知識や節税対策などにも精通しており、仕事では厳しいあのタキさんでさえ舌を巻くほどの実力を持っているのだ。
そんなどうでもいい事を考えているうちに、フリーズしていた御前がようやく『恥』という呪縛から解放されたらしい。だが彼は険しい表情とは裏腹に、周囲からは聞こえないような小声で俺に抗議してきやがる。
「そなたはこの儂に、よほど恥をかかせたいようじゃな?」
「ちょっと待てよ。俺に文句を言うのは筋違いってやつだろ?そもそもジジィ達に止めを刺したのは、アンタ等が守護神などと御大層に崇めていやがる、この綾女じゃねぇかっ!」
御前の発言は、如何にも俺が悪者だと言わんばかりの口振りだ。
ジジィの咎めるような視線にカチンときた俺は、無意識のうちに隣りで何食わぬ顔で座っていやがる綾女の、その透き通るような白い頬を気を込めた指で思いっきりグリグリと捻り上げてやる。
「ヒイィーッ!しょにゃた、にゃにひゅえりぇいたいでありゅわりゃわに、ふりぇる事ができりゅのじゃっ!?」
「こっ、これよさぬかっ!神であられる巫女神様に暴力など、畏れおおいにもほどがあるぞっ!」
「スキンシップをお取りのところ、大変申し訳ございませんが……」
「別に朋ちゃんが気を使う必要なんてないさ。それに何処をどう見てこれをスキンシップと言えるのかが不思議で、俺の頭の中は疑問符だらけなんだけど?まぁそんな些細な事はどうだっていいや。どうせ年寄りの戯れ言と、悪質な背後霊の世迷い言なんだから……」
「私にはとっても仲の良いおじい様と、お孫さんのやり取りにしか見えませんでしたけど……それに、ストーカーって何ですか?」
二人の抗議する声を軽くスルーした俺に対し、笑顔を浮かべながらとんでもない事を口にしている朋ちゃん。
朋ちゃんの発言に対する反論や、こんなお馬鹿な二人の説明をする気すら失った俺は、彼女に向かって軽く手招きをすると、顔を寄せてくる彼女の耳元で誰からも聞き取られないよう小さな声で囁くように言葉を発した。
「えっ!?その様な前例など、聞いた事もございませんが……?」
「いいんだ。前例がないのであれば、今から作ればいいだけの話しじゃないのかな?じゃあ朋ちゃん、後は頼んだよっ!」
「政影様に対し、お言葉を返し大変申し訳ありませんが……」
まだ何か言いたげな朋ちゃんの瞳が俺の視線と交錯した瞬間、彼女は俺を制止する言葉を途中で止め、颯爽と身を翻して厨房の奥へと消えていく。
『ダァァーンッ!!』
「お待たせいたしましたぁ!政影様の今宵のお相手は、どうやら朋子さんにお決まりになられたみたいですねぇ?」
朋ちゃんを見送る俺の背後から、カウンターに何かを強く叩きつける音に続き、瞳の意味不明な言葉が俺を責め立てている。
「なっ、何なんだいきなり?お前は一体、何を考えているんだ?」
「どうせ私なんて、裕子さんや朋子みたいに美人ではありませんし……政影様にとって私は、掴みの為の捨てキャラでしかなかったのですね?グスッ……」
「おにゃごをあまゃくみておりゅ故、こにょようにゃけっきゃをまにぇくにょじゃ。こにょたわけぎゃっ!」
「巫女神様の仰せの通り、まさに自業自得というやつですな……」
「しょうじゃ。ことびゃにょ通り、おにょりぇでみゃいた精子じゃからにょう」
確かに瞳とはかなりご無沙汰だったのは事実ではあるれど。『そんな事を、しかもこの様な場で言うのか?』
それにしてもこの外野の二人ときたら、シカトを決め込む俺に、喧嘩でも売っているかの様な台詞を羅列していやがるし……
「瞳。どうやらお前は、何か勘違いしているようだ。今夜の俺は、時間の許す限り呑み明かすつもりなのだからな」
「えっ!?そうなんですかぁ?酔っ払われた時の政影様のアソコって、とても勃ちが悪くなっちゃって、たまに使い物にならない時もありますからねぇ~……」
『お前の判断基準ってやつは、そこにしかないんかいっ!!』
またしても心の中で突っ込みながらも、俺は事態の収拾に動く。
「その様な不適切な発言、嫁入り前のレディがするもんじゃないと思うんだけどなぁ……お前は自分では気づいていないかもしれないけど、瞳には裕子や朋ちゃん達には無い、良さってやつがあるのになぁ」
「本当ですかぁ?でも政影様がこの場を収める為、嘘をついていらっしゃる可能性もございますので……俄には信じられません」
「嘘なもんか。彼女達とお前とでは、そもそも系統が違うんだ。」
「系統ですかぁ?」
「そうだ。確かにお前が言うように、あの二人はかなりの美人ではある。だけどな瞳、お前はそれに負けないほどの可愛らしさを持っているじゃないか」
「本当に、本当ですかぁ?」
不安げな顔をする瞳に俺は飛びきりの笑顔を向けて説明してやると、まだ幼さの残る顔を薄紅色に染め、はにかみながら笑顔を浮かべていた。
「ああ、俺は嘘はつかないからな。それより瞳、いい加減仕事に戻らないと、また裕子から長々と説教を食らうハメになっちまうぞ?」
「あぁっ、いけないっ!政影様、また近いうち寝所にお誘いくださいねっ!!」
「そうだな……」
俺の言葉に焦りの色を隠せない瞳。そんな彼女の背にひらひらと手を振りながら答えていた俺の耳に、あの二人の耳障りな発言が遠慮なしに届いてきやがる。
「みゃたしてみょ女子を、うみゃく丸め込みにょったにょお……」
「確かに巫女神様の仰る通りですな。それにしましても政影のこの女癖の悪さは一体、何処からきておるのでしょうか?」
「しょのひょうな事は決みゃっておりょう。あにょバカ政道にょ血じゃっ!あやちゅときたりゃ、わりゃわの目を盗んではちゅぎからちゅぎに、他所のおにゃごを孕ましにょってかりゃに……こやちゅを見ておりゅと、あにょ当時にょ悪夢にょようにゃ辛い日々を思い出し、口惜しゅうてなりゃんわっ!!」
『いい加減にしやがれっ!さっきから人が大人しく聞いていりゃぁごちゃごちゃと……潮吹き女と誤爆男の二人が、なに偉そうに解説付きで実況中継をしてくれていやがるんだ?そもそも、ご先祖様の女癖の悪さの原因ってつは、そもそも綾女がお馬鹿だからじゃないのかぁ?』
苛立ちのまま言葉を発してもよかったのだけど、『今後の一族運営に支障をきたしてもいけないからなぁ』そう判断した俺は今回だけは特別に二人の立場と言うやつを考え、直接脳へと不満を送り込んでやると……
自分達で話題を振っておきながら、この二人にとってはよほど触れて欲しくないトラウマだったらしいく、ジジィはカウンターに肘をついて頭を抱え石化し、綾女にいたっては大きく見開いた瞳に溢れんばかりの涙を溜めて俺を見つめている。
「本当に面倒なやつらだ……分かった。もうその話題には触れないからさぁ、そんな辛気臭い顔をするなっ!」
「まゃこときゃ?」
「本当じゃな?」
「勿論、俺は嘘をつくつもりは全くないんだけど……」
「にゃんじゃ政影?申したいきょとがあれぇば、ひゃっきりと申しぇっ!」
返答を促す綾女の発言に対して俺はカウンターに向かったたままの姿勢で、後方のとあるテーブル席に向け親指を指し示してやる。
慌てて振り返る二人の視線の先では、その手の話題を大好物とする涼子ちゃんと美鈴さん、あの淫乱師弟コンビが妖刀に触れニヤニヤと笑いながらこちらの様子をを伺っているはずだ。
「政影様、準備が整いました」
「わかった。朋ちゃんには悪いけど、更衣室まで案内してくれないかな?」
「はい。喜んで……」
肩を落とし項垂れている二人をしばらく眺めていると、背後から静に声を掛けてくる朋ちゃん。
ジョッキに半分ほど残っていたビールを一気に煽った俺は、席から立ち上がりながら綾女の触り心地の良い柔らかな頬から手を離し、いまだ呆けている御前に向け言葉を発した。
「おいジジィ、いつまでボケっとしていやがるんだ?」
「なっ、なんじゃいきなり?」
「俺が席を空けている間、アンタから焼き鳥と串揚げの食い方ってやつを、皆さんに説明しててくれないか?」
「わしは一向に構わぬが、一体どこへ行くと申すのじゃ?」
「すぐにわかるから気にするな。趣向には趣向で返さないとなぁ……行こうか朋ちゃん」
「はい」
まだ何かを言いたげな御前をよそに、俺は朋ちゃんに伴われ会場を後にした。
少しづつではありますがお気に入り登録が増え、作者として本当に嬉しい限りですね。
相変わらずのドン亀更新ではありますが、これからもご愛読のほど宜しくお願いいたします。
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