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時間はちょっとだけ巻き戻って、その日の夕方のレジーナさんです。
第二章 12.深淵
 レジーナが執事を探し当てた時、彼は厨房の隣にある召使い用の食堂で、侍女と問答しているようだった。
 都合が悪い。レジーナは溜め息をついた。
 今日はシェリルと夕食を食べようと思い、執事にこっそり用意を整えるように頼みにきたのだが、他の侍女がいる手前では憚られる。シェリルはレジーナの相談役でもあるが、個人的にシェリルを重用しているような印象を、侍女たちに持たせるのは、あまり良くはない。
 このような不安定な状況下では、なおさらだ。万一シェリルやそしてレジーナ自身が、侍女たちの不信や叛意を買うようなことがあれば、夫がいない今、手がつけられない事態になる可能性もある。
 そこまで考えて、情けなくなった。だが仕方ない。エドワードが起こした騒動を、あんなに大きくなる前に防ぐことができなかったのは、レジーナの力が足りないからだ。せめて同じ轍を踏んではならない。
 食堂に入ってきて、黙って出るわけにもいかない。レジーナは、食堂の隅で何か話し合っている執事と侍女に声をかけた。
「どうしたの?」
 二人が振り返る。今までレジーナに気づかなかったらしい。
 執事の体に隠れて見えなかった相手の侍女を認め、レジーナは複雑な思いで顔をいくらか綻ばせた。執事と深刻な顔で何事か話していたのは、マイラであった。
 古参の侍女である彼女は、夫に忠誠が厚く、レジーナに対しても昔から非常に好意的であった。年齢は下だが、レジーナは侍女の中でも彼女をとても信頼していた。マイラもレジーナの立場や彼女の悩みを承知しているので、レジーナがシェリルを頼ることを理解してくれている。
 マイラの前でなら、執事にシェリルとの夕食を頼んでもいいだろう。
 しかし同時に、レジーナの胸に薄い靄がたちこめる。
 マイラはかつて、レジーナの義理の叔父──先代副伯の弟の家に勤めていた。彼女はそこで生まれ、少女の頃に、本家ともいえるこの城に上がったのだ。言うまでもなく、先代副伯の弟とは、エドワードの父である。つまり幼い頃、彼女はエドワードと同じ屋敷で育ったことになる。
 あのエドワードが、間違いなく夫の従兄弟であると告げたのも、信頼あるマイラの言だからこそ、信じたのだ。
 エドワードの父は既に亡くなり、既に一家は離散したようだ。理由や事情は、レジーナも知らないし、興味は無かった。
 その後数人の供を連れ、この近辺を放浪していたエドワードと、マイラはごくまれに、手紙などで連絡を取っていたらしい。この城が大公軍に占領されたことも、マイラが手紙でエドワードに知らせたのだ。
 しかし先日押しかけた彼は、それ以上のことを知っていた。
 大公軍の司令官が、侍女を寝室に呼びつけていること、イブが行方不明になっていること。
 それらを知り、そしてエドワードに知らせることができたのは、マイラしか考えられない。
 だがレジーナは、信頼厚い侍女を正面から問い詰めてはいなかった。
 エドワードは既に領民の信頼を失った。そして決闘に敗れた彼は、夫が戻るまでは、レジーナの采配に口出ししないと誓った。
 それで十分だ。もう彼には、何もすることができない。この上でマイラを問い詰めても仕方ない。
 
 振り返った執事は、普段温厚な顔を曇らせている。マイラもまた、温和な顔立ちを強張らせていた。どうやら込み入った話をしていたようだ。
「何かあったの?」
 嫌な予感を覚え、レジーナも眉を僅かに寄せて二人に尋ねた。
 短い沈黙が流れる。執事は気まずそうに目を伏せた。口を開いたのは侍女の方であった。
「いいえ……今夜の夕食のことで、少し……」
「なあに? 献立の話?」
「いいえ……」
 どうもレジーナがいては話しづらそうだ。
 だが、だからといって引っ込むわけにはいかない。執事と古参の侍女が深刻になるような話は、女主人である彼女が知らないわけにいかない。
「どうしたの? 私に話せないこと?」
 率直に尋ねると、執事は息をつき、マイラに視線を向けた。同じように目を伏せていたマイラが、決然とレジーナの目を見た。
「レジーナ様、今夜の司令官様とのお食事は、ぜひ私をお招きくださいと、司令官様におっしゃっていただけますか?」
 束の間、レジーナはマイラが告げたことの意味が分からなかった。
 先日、エドワードがやってきた前日の夜を除いて、レジーナはグレンと夕食を取っていない。彼女は客用の小さな食堂で食べ、グレンは副伯夫妻が使っていた、家族用の食堂兼応接間で食べているはずだ。
 グレンと食事をするなどと、まるでその後の寝所も共にしたいという申し出のようではないか。
 実際、イブによって負傷するまでは、グレンは侍女をまず食事に呼びつけ、その後寝室へと招いていた。彼によって、侍女の中から一番最初に選ばれたマイラも、同じように司令官と食事をした後、共寝したはずだ。その後、婚約者がいる彼女は、グレンに抱かれた屈辱を言葉少なにレジーナに語った。
 そのマイラが、再びグレンと寝たいと言っているのだろうか。レジーナの頭は、軽い恐慌に襲われた。 
 かつてグレンは、それなりに女受けが良かった。
 顔立ちも甘いし、低い声も魅力がある。鍛えた長身の体は、傭兵が出入りするような、酒場や食堂の女たちの目を引いた。頭も悪くないので、話もそれなりに面白い。若い頃のレジーナも、グレンに男として全く興味が無かったわけではない。それに彼が寝床で女に与えるであろう快楽は、確かにある種の女たちを夢中にさせるのかもしれない。レジーナ自身、逆らいがたい力を感じているのだ。それは認めないわけにいかなかった。
 無論──と語るのもおかしいが、そうして彼に近づいた女たちは、グレンにいいように遊ばれて捨てられた。彼の悪評は酒場などでも有名だったが、グレンに惚れた女たちは、『自分だけは違う』と思い込んでしまうらしい。彼に取っては他の女は遊びだが、自分とだけは本気で愛を育んでくれるはずだと。
 レジーナは女たちに同情しつつも、彼女たちの迂闊さ、甘さに、僅かな軽蔑を覚えていた。
 まさか、マイラも。
 あのくだらない男のうわべだけの魅力にとりつかれてしまったのだろうか。 
「マイラ……」動揺を押し隠して、レジーナは答えた。「いきなりどうしたの? 司令官様なら、ここのところは一人で食事をお召し上がりのはずよ。あなたが何もそんな……」
 マイラの顔が歪んだ。そして同時に目を伏せていた執事が、複雑な視線をレジーナに送る。彼女は思わず口を噤んだ。
 そして気づいた。
 負傷した後、寝込んでいたグレンは、寝台から起き上がるようになっても、一人で夕食を取っていた。ずっとそうしていると思っていたが、今も一人で食べているのか、本人からも、執事からも聞いたことはない。
「レジーナ様はご存知なかったかもしれませんが」レジーナの予測を裏付けるように、マイラが震える声をあげた。「司令官様は、ここ数日、以前のように私たちを夕食と寝所にお召しになっているのです」
 頬を張られたような気がした。むしろ、自分で自分の顔を、いやというほど張ってやりたい。
「……本当なの?」
 レジーナに重い声で尋ねられ、執事は頷いた。
「はい。司令官様のお使いの方から、直接私が言いつかっておりました」
「どうして、私に言ってくれなかったの」
 執事の気持ちは解る気がしたが、つい詰問口調になった。執事は頭を垂れて、小声で答える。
「申し訳ございません。奥方様の心労を増やしたくなかったのです。私の口からは、とても申し上げられず……。いずれ侍女か司令官様ご本人から、伝達があるかと……」
 レジーナは唇を噛んで、彼女よりやや低い位置にある、白髪が混じった頭を見下ろした。
 彼の言うことも分かる。領地の問題で頭を悩ませているレジーナに、再び侍女が呼びつけられていますなどとは、言いづらいだろう。レジーナがそれを知ったところで、どうしようもない。グレンの負傷により、中断されていたことが、再開されただけのことなのだ。
 だが何人もの侍女が、マイラやイブのような思いをしていたというのに、何も知らずに、放牧地の問題しか考えていなかった自分の間抜けさが情けない。当の侍女たちには、さぞかし能天気な女主人に見えていたことだろう。

 仁王立ちのまま、黙って眉をしかめ、目を閉じたレジーナに、マイラが穏やかだが芯のある声をかける。
「レジーナ様、どうかお一人で悩まないでください。司令官様の申し上げることですもの、どうしようもないことは分かっております。けれど今日は、どうか私を代わりにお召しになるよう、司令官様にお伝えください」
「代わりって……誰の?」
 レジーナの口から漏れた声は、自分でも驚くほど暗かった。
「シェリルです」
 再び頭を殴られたような衝撃が、レジーナを襲った。なんて呑気だったのだ。レジーナがのほほんと夕食を共にしようとしていた侍女は、既にグレンに呼びつけられていたなんて。
 己を苛むレジーナに、マイラが続けざまに言い募る。
「少し前に、司令官様付の副官の方が、シェリルの部屋に入っていくのを見たのです」
 マイラの言うことは事実だろう。グレンは選んだ侍女を呼び出すのに、レジーナや侍女頭を通さず、自分の副官に直接呼びに行かせていた。それ以外の用事で、士官たちが侍女の部屋を訪れるわけがない。
 レジーナ本人が侍女を呼び出すのは、あまりに後ろめたく、つらいと思っていたので、副官が侍女を呼び出すことになっているのは、正直ありがたいとレジーナは思っていた。しかしこのことが、とんだ無知につながってしまったものだ。
 自分が情けない。
 溜め息を吐き、レジーナは口を開いた。
「マイラ、あなたが代わりになることはないわ……」
 私が代わる。
 そう言おうとして、レジーナはためらった。
 マイラを含め、他のグレンに抱かれた侍女たちは、皆同じ思いをしているのだ。
 レジーナは侍女たちの中で、シェリルを最も信頼し、親しみを覚えている。身分は違っても、彼女は部下などではなく、まず友人であった。
 シェリルが乙女かどうかは知らないが、多くの男に求婚されながら、独身を貫いている彼女が、グレンのような男に遊びで抱かれるのは、苦痛以外の何物でもないだろう。
 だからといって、シェリルが呼び出された時だけレジーナが代わるのは、他の侍女にとって公正ではない。だいいち、既にレジーナに飽きたなどと言っていたグレンが、若い侍女の代わりとしてのレジーナを承知するかどうかは分からない。
 レジーナの逡巡を察したのかどうか、感情を高ぶらせた声でマイラが言った。
「レジーナ様、私なら大丈夫です。これ以上、シェリルにむごい思いをさせたくないのです」
「これ以上って、何? シェリルが呼び出されるのは、初めてじゃないの?」
 眉を寄せたマイラの瞳が潤んだ気がした。彼女は口元を片手で覆い、数度首を振る。
「言えません……でも」
 侍女の瞳から涙が零れるのを目にし、ただごとではないと感じたレジーナは、硬い声で執事に告げた。
「ジョージ。悪いけど、少し外に出ていてくれない?」
 執事は恭しく頭を下げ、心なしか沈んだ足取りで、食堂から退室した。

「マイラ、話して。何があったの?」
 片手で顔を覆い、声もなく涙を流すマイラの肩をつかみ、レジーナは彼女を手近な椅子に座らせようとした。しかしマイラは首を振ってそれを拒絶した。
「レジーナ様……私からは申し上げられません」
「じゃあ、誰に聞けば教えてくれるの? シェリル?」
「違います。どうか、シェリルにだけは訊かないでください……」
 何かあった。
 泣き崩れんばかりのマイラを前に、レジーナは確信した。何度かシェリルと食事をして、他愛もない話などをしているが、特に変わった様子は見られなかった。しかし彼女の身に何か起こり、そしてマイラはそれを知っているのだ。
「マイラ。話してちょうだい。シェリルがどうしたの? 私が知らなくてもいいはずないでしょう」
「でも、シェリルが、レジーナ様にこれ以上心配をかけたくないからと言って……」
「もうここまで知ってしまったのよ。黙っていられる方が、よほど心配だわ。シェリルに尋ねてはいけないなら、あなたから話して。あなたから聞いたとは、絶対に言わないから」
 マイラは首を振りつづけたが、レジーナが粘り強く問い詰めるうち、ついに話し始めた。
 まだレジーナが放牧地の視察に行っている間、シェリルが大公軍の兵士に強姦されたという。
 そんなことがあったばかりのシェリルが、司令官の寝室に呼び出されたらしいことを知ったマイラは、召使用の食堂で夕食の采配をしている執事に事実を確かめ、自分が代われないかと頼み込んでいたところだったのだ。
 話を聞き終わったレジーナは、嗚咽を漏らしているマイラの背中を軽く叩き、強引に椅子に座らせた。
「マイラ、話してくれてありがとう。大丈夫よ、司令官様とは私が話し合ってみる」
「でもレジーナ様、司令官様の不興を買っては……」
 不安げにレジーナを見上げる、慎重な侍女の肩を安心させるように抱く。
「大丈夫。そのあたりは気をつけるわ」
 それだけ言い、レジーナはすぐに立ち上がった。なおも危なげな視線で彼女を見ているマイラを振り切るように、踵を返して食堂の扉を開け、廊下を歩き出す。
 グレンはかつて、兵士や士官たちに、城内や城下の人間に乱暴はさせないと約束した。
 シェリルが受けた仕打ちをグレンがまだ知らないなら、知らせて抗議し、犯人の兵士を処罰させる。
 だが、もしグレンが既に知っているなら。


 **


 女の部屋を訪ねるので、長剣は持ってこなかった。そのことをロデリックは大きく後悔した。
 用心しながら、慎重に素早く振り向く。机に据えられた一本きりの蝋燭の炎が、届くか届かないかという、寝台の向こう、部屋の入り口近くの壁際に、人影があった。
 意識に霞がかかったシェリルも僅かに顔を上げて、形相を一変させたロデリックの視線の先を追う。
 風の無い澱んだ空気の部屋の中、蝋燭の炎は微かに揺らめくだけだ。
 ちらちらと踊る頼りない明かりでは、シェリルはよく見えなかったが、暗闇に慣れたロデリックは、壁際に立っている男の姿が見てとれた。ロデリックは、シェリルの上に屈み込んだままの、己の不自由な体勢を呪った。彼も小振りの短剣は腰に佩いているが、相手は既に短剣を抜いている。
 それを投げつけられても、彼はよけることができるかもしれない。だがそうすれば、刃はロデリックの背後にいるシェリルに突き刺さるだろう。
 何故気づかなかった。
 自分の迂闊さに、歯噛みしたい気分だった。シェリルの背に香油を塗っていた頃には、確かに室内には誰もいなかった。だがその後、彼女が息を乱し始めたあたりからは、確信が持てない。ロデリックも、シェリルの反応しか見ていなかった。
「楽しそうだな、ロディ」
 壁の前で無造作に佇んだまま、グレンは呟いた。
 床を這うような低い声が耳に届き、シェリルも寝台の向こうに立っている人間が誰だか分かった。血の気が引く。部屋に鍵は無いが、扉はしっかり閉めたはずだ。いつの間に入り込んだのだろう。そして、いつから見られていたのだろう。
「用事があって兵舎に戻ったら、まだサラがいたんで、お前が侍女を呼んでくるのを忘れてるのかと思ったんだ。たまには、こっちから押しかけるのもいいと思って部屋に来てみりゃ、まさか自分の部下が女に手を出してるとは思わなかったな」
 グレンはそこで言葉を一度切り、低い笑いを漏らした。シェリルには相変わらず彼の表情は見えなかった。
「俺はお前に、女を連れて来いと言ったんだ。誰が先に食っていいと言った」
「申し訳ございません」
 ロデリックは上体だけ、グレンの方を振り向きながら、抑揚の無い声で言った。グレンは目をすがめ、彼を見据える。
「以前に、その女と知り合いかと訊いた時に、お前、知らないと言ったよな」
「いいえ。彼女を知らないとは申し上げておりません。尋ねられた時には、思い出せなかっただけです」
 しゃあしゃあと言ってのけるロデリックに対し、グレンは舌打ちした。確かにそうだ。シェリルについて尋ねた時、副官は首を傾げてはいたが、否定はしていなかった覚えがある。
「すっとぼけやがって……。まあ、女と馴染みがあったかどうかは、どうでもいい。他の士官どもは、俺の言うことを聞いて、真面目に禁欲生活送ってるってのに、お前だけいい身分じゃねえか。サラとのことも、俺が知らないとでも思ったのか」
 グレンは右手で握っていた短剣の柄を、掌で回転させて握り直す。
 それを目にしたロデリックの体に緊張が走った。右の腰に下げた短剣に手を伸ばす。グレンは現在の彼の身分上の上官であるが、だからといって素直に殺されてやるほどの義理はないつもりだ。
 だが、即座に短剣を抜くことはためらわれた。刃物を抜くのは敵意の表れだ。かつて傭兵であったグレンは、尚のことそう捉えるだろう。ここでロデリックもグレンに対して短剣を向ければ、戦うしかなくなる。
 間合いはある。一対一なら、どうとでもなる。問題はシェリルがいることだ。ロデリックがここで逃げようとするなら、グレンは代わりにシェリルを斬り捨てかねない。
 グレンがどこから話を聞いていたのかは分からないが、彼らが旧知の間柄であることには聞こえたようだ。そしてシェリルを傷つけることが、ロデリックにとっての制裁になりえることにも気づいているだろう。
 二度寝室に呼んだことからしても、彼はシェリルをそれなりに気に入っているのだろうが、グレンにとっては女は皆同じだ。遊び道具に過ぎない。シェリルの代わりになるような可愛い女など、いくらでもいる。
 必要があれば、シェリルを傷つけ、殺すことも簡単にやってのけるだろう。グレンが女に執着することは、珍しいが、まれにある。しかしそんな稀有な女であっても、自分の害になる、あるいは興味が失せれば、彼はためらいもなく女を見捨て、時には自ら始末した。
 ロデリックもグレンのその性質を非難するつもりはない。自分も似たようなものだし、女に入れ込んで目的を忘れるようでは、あの大公が抱える将軍としてふさわしくない。
 しかし今この場では、シェリルに対するグレンと自分の情の違いが、ひどく不都合だった。
「妙なこと考えるな。女も巻き添えになるぞ」
 ロデリックの逡巡は一瞬だったが、グレンはそれを読んだかのうように口を開いた。
「サラのことはいいとしても、俺は城内や城下の女に手を出すなと、お前ら全員に言ったよな。それも覚えてないほどボケが始まってんのか」
「いいえ、覚えております」
「命令を破れば、処罰するとも言った。それも、その忌々しい脳みそで覚えてるな」
「はい」
 シェリルには、グレンの姿はまだよく見えなかった。蝋燭の弱弱しい明かりに、長身の濃い影がぼんやりと浮かぶだけで、ただ、静かに恫喝するようなグレンの押し殺した声が聞こえる。応じるロデリックの声は、相変わらず平坦で動揺も聞こえない。 
「分かってんならいい」もう一度、グレンの小さな笑いを漏らした。その声の奥深くには、張り詰めた芯がある。「続けろ」
 シェリルは、グレンの言ったことの意味が分からず、まだぼんやりと前方の壁を眺めて、影に溶け込んだ声の主の姿を見分けようとしていた。彼女の目の前で、上半身だけ振り返っていたロデリックも、そのまま動かなかった。奇妙な、ねじれたような静寂が落ちる。
 やがて再びグレンの押し殺した声が聞こえた。
「聞こえなかったのか? そのまま続けろ。女をイカせてやるんだろ? 俺にも見せろ。たまには見てるだけなのも楽でいい」
 グレンの存在を知り、冷え始めていたシェリルの頭に、再び血が上る。
 冗談なのか、皮肉なのか。そう思いたかったが、彼女からは、相変わらずグレンの表情は、闇に紛れて見えなかった。
 腰をひねり、上半身だけ壁に向けていたロデリックが、寝台の上で膝立ちになる。彼が体ごと振り返ろうとすると、威圧的な低い声が響いた。
「こっちを向く前に、まず腰に下げてる短剣を床に捨てろ」
 木張りの床が微かに軋んだ。頼りない明かりの輪の中に、グレンの姿が入ってくる。シェリルは慌てて腕で胸を覆い、膝を体に寄せて局部を隠した。しかし彼はシェリルの動作には構わず、ロデリックを見据えている。唇は緩み、僅かに笑みをかたどっていたが、好意や寛容などひとかけらも感じさせはしなかった。副官に向けた視線は、猛禽のように鋭く硬い。
 右手に短剣を握りこんだままのグレンを一瞥し、ロデリックは腰に佩いた短剣に手をかける。グレンの乾いた声がそれを遮った。
「お前は短剣に触るな。シェリル、お前がやれ。そいつの腰の短剣を鞘ごと床に捨てろ」
 シェリルはかすかに体を震わせ、ロデリックを仰ぎ見た。彼はグレンに顔を向けたまま、短剣にかけようとした手をだらりと垂らす。
 どうしよう。
 冷たい焦燥が、シェリルの肺の奥から立ち昇ってきた。
 他の男に体を触らせるな。万一のことがあれば、相手の男を殺す。
 以前グレンに抱かれた後、彼はそう言った。士官や兵士たちは、城内や城下の女性と肉体的な交渉を持つことを禁じられている。
 グレンに言われるまま、ロデリックから短剣を取り上げた後に、丸腰の彼が、なすすべもなくグレンに斬り殺されてしまったら。
「グレン様……」
 シェリルは口を開いたものの、後が続かなかった。ロデリックとは親しい知り合いであったと言えばいいのだろうか、それとも無理やり押さえつけられていたのではなく、合意の上で行為に及ぼうとしていたとごまかせばいいのだろうか。しかしいずれもグレンの怒りを解くには至らないだろう。グレンはか細い声を上げたシェリルに目も向けなかった。
「言うとおりにして」
 ロデリックがシェリルに一瞬だけ視線を送り、囁いた。
 尚もシェリルが躊躇していると、やはり彼女を一瞥したグレンが、再び口を開く。
「びくびくするな。お前らが妙な真似しなきゃ、何もしねえよ。さっさとそいつの短剣を捨てろ」
 仕方なく彼女は、ロデリックの腰に下がった短剣の鞘に手をかける。彼の下半身が僅かに膨らみ、服を押し上げているのが目の前に見えて、そんな場合ではないと思いながらも、顔が熱くなった。鞘をベルトから外す手つきが、ぎこちなくなる。
 やっと外した短剣を、指示通りに床に落とした。その間、ロデリックは身動きもせず、口も開かず、グレンに視線を留めたままだった。
「お前は女の後ろに回れ」グレンは傲然とロデリックを顎で差す。「女が見えなきゃ面白くない」
 一瞬の沈黙の後、ロデリックはシェリルの肩を掴み、膝立ちのまま、彼女の背後に回った。シェリルが覗けたその顔は、感情の表れない無表情に戻っている。
 グレンの視線からシェリルの姿を半分隠してくれていた、ロデリックの体がどくと、全裸の彼女はグレンの視線に晒される。
 耐え切れずに、シェリルは体をねじってそむけ、背後にいるロデリックを振り向いた。茶色の瞳と視線が合う。乾いた表情の瞳の奥に、僅かに何かの感情を見た気がした。
「こら、シェリル。こっち向け。俺が言ったこと忘れたか? 他の男と何かあったら、相手はただじゃ済まさないと言ったよな。そいつを殺されたくないなら、言うとおりにしろ」
 ロデリックを凝視する間もなく、シェリルはグレンを振り向く。
 後ろから回ったロデリックの手が、横向きにねじっていた彼女の胴と肩をつかみ、正面を向かせた。
「待って……」
 背中に虫が這うような不安を覚え、シェリルはロデリックに首を向けた。だが彼は彼女を見返さず、力を込めて娘の肩を抱くと、耳元で、ごく小さな声で囁いた。
「言うとおりにして」

 後ろから伸びた両手が、柔らかい乳房を押さえる。首筋に唇が押し当てられた。
 シェリルはロデリックの腕を押さえ、振り払おうとしたが、彼の腕は全く揺るがなかった。
 つい先ほどは、同じ手で乳房を撫でられ、快楽に喘いでいたが、目の前にグレンがいるこの状態では、快楽を感じるどころではない。ただ居心地の悪い恥じらいと焦りに苛まれた。
 この場から逃げ出したい。しかしロデリックにしっかりと捕まえられ、それがかなわない。動けたとしても、彼女が逃げれば、グレンはロデリックを殺そうとするだろう。
 ロデリックの言う通り、この場ではグレンの言うとおりにするしかないのかもしれない。
 隙を窺って、逃げることができれば……。
 首筋に再び唇が触れる。舌が伸びて肌を撫で、彼女は大きく体を震わせた。舌は首筋を這い上り、喉と顎を通って、耳たぶに触れる。
「シェリル」
 もう一度、唇と舌が触れるだけの、ごく微かな囁きが、耳の奥に忍び込んだ。恐らくグレンの耳にも届いていないだろう。
「変なこと考えないで。僕も君も命が危ない」
 失望がシェリルを襲った。ロデリックはどうにかして、この場を脱出することを考えているわけではないのだろうか。グレンの言いなりになることは、彼女の素肌、そして痴態を晒し続けることだ。
「わかった?」
 ロデリックの囁き声は小さすぎて、言葉以上のものを全く聞き取れない。
 わからない。
 そう答えたかったが、囁きと同時に右の乳首を軽くつねられ、シェリルは眉を寄せて口を噤んだ。
 彼の指先にはさまれて、乳首は増々固くなる。つい視線を下げて自分の胸を見ると、ロデリックの繊細な指の間で、紅色の突起が身をよじるようにして玩ばれているのが目に入った。反対側の乳房は、彼の左手によって揉みしだかれ、掌の下で卑猥に形を変えている。
 今、シェリルの真正面にいるグレンも、同じ光景を見ているのだ。まるで玩具のように、乳房を背後から玩ばれるシェリルを見ている。
 見てはいけないと思いながら、彼女はグレンに視線を向けた。
 彼は相変わらず短剣を握って立ったまま、薄笑いを浮かべてシェリルを見ている。重さも実体も持たない視線が肌を這うのを、確かに感じた気がした。
 グレンと目が合う。体の奥を突かれたような錯覚に襲われた。
 その小さな衝撃から覚めない内に、再び首筋に舌が触れる。彼女は思わず目を閉じて、体を跳ねさせた。先ほど触れられた時より強烈な、痺れるような刺激が突き抜けた。
 体が熱くなっている。背後から体を玩ばれる様子を、別の男に見られているというのに、恐慌と羞恥の裏で、ざらついた熱がシェリルの肉体を覆い始めている。

 さらさらとした髪が、首の皮膚をくすぐる。同時に濡れた舌が首筋を這い回った。覚えのある、とても懐かしい感触だった。
「は……あっ」
 なぶられるようなもどかしい快感が、肌の下から全身に回る。シェリルは思わず溜め息と微かな喘ぎを漏らした。
 唾液が皮膚を滑る音に混じり、娘の乱れた息遣いが室内に響く。彼女の豊満な乳房は背後の男に玩ばれ続け、愛らしい乳首は切ないほどに固く尖っている。
 シェリルはロデリックの手首をつかんだままだったが、もはや体から離そうという力も入らず、まるでさらに愛撫をせがむようにそこを指で撫でているだけだった。指先に感じる、彼の手首の骨の形も彼女の記憶の底を刺激した。体の中で密度を増す情熱がさらに煽られる。
 しっかりと閉じた脚の間が熱くなり、シェリルはもぞもぞと腰をくねらせた。体の中心が擦れ、切なさを帯びる。彼女は荒い息を吐き、無意識に目を閉じて、乳房を探る男の手が与える快楽に没頭しようとしていた。
「シェリル、脚開け」
 だが夜を思わせるグレンの深い声が耳を打ち、彼女に再び羞恥と屈辱を植え付ける。
 彼女はうっすらと目を開け、紅潮した顔でグレンを見た。彼はじっとシェリルに視線を注いでいる。体中がかあっと熱くなり、背中から汗が吹き出るような気がする。彼女は目を逸らし、背後の男にされるがままになっている自分の体を恥じた。さらに固く脚を閉じる。体の芯に熱が収縮し、微かに腰が震えた。
「おい、脚開かせろ」
 シェリルが脚を閉じたままのためか、グレンはぞんざいにロデリックに向かって言った。
「シェリル、脚開いて」
 再び耳元で、ロデリックが囁く。彼女はグレンにではなく、ロデリックに対して首を振った。
「いや……」
 これ以上我慢できない。ロデリックに体をまさぐられ、それをグレンに正面から見つめられているなんて、恥ずかしくて死にそうだ。かつて何十回となく抱き合ったロデリックは、シェリルの肉体を熟知している。彼女が知っている男女の愉楽は、ほとんど彼に教えられたものだった。
 その彼に愛撫され、両脚の間は熱く潤んでいる。それをグレンに見られるなどと、考えるだけで顔から火が出そうだ。きっと彼女の全ての誇りが、ばらばらに吹き飛んでしまう。
 見せないで。
 そう訴えたかったが、できなかった。
 グレンの言葉に逆らわせることは、彼に彼女のために、命を賭けさせることだ。シェリルからは簡単に頼めない。ただ彼の方が、かつて恋人と呼べるほど親しかった彼女の為に、そうしてくれることを祈るしかなかった。
 だがロデリックは左手を伸ばし、シェリルの内腿に触れた。ぐっと力を込められる。彼の手がふくよかな彼女の肌に食い込んだ。
「シェリル……」
 聞き分けのない幼子を諭すような囁きが、耳元で聞こえた。
 非難を込めて、ロデリックを振り向こうとしたが、右手で顎を押さえられる。のけぞらせるように軽く彼女の顔を持ち上げ、彼は囁いた。
「言うこと聞いて。目をつぶって、僕の声だけ聞いてて」
 めまいがしそうだった。彼の囁きは冷徹であったが、限りなく優しかった。彼女の自尊心を甘美に、凶暴に叩き壊していく。
 瞳が潤み、涙が出そうになった。鳩尾あたりに熱い塊が生まれ、息が苦しかった。  

 ロデリックが娘の膝に手をかけ、彼女の両脚を開かせた。赤黒く染まり、膨れ上がった秘唇は、腿の付け根まで広がった、熱い粘液にまみれている。襞の奥、最も瑞々しく生命力に溢れた場所までは、蝋燭の光は届かなかった。
 シェリルの背後から伸びたロデリックの指先が、彼女の濡れた内股に触れた。
「……あ!」
 ロデリックに顎をつかまれ、喉を仰け反らせたままのシェリルは、小さな叫びを上げて、体を震わせた。官能と屈辱の熱に染まり、敏感になっている肌は、指先で触れられるだけの僅かな刺激も、薔薇色の快楽として捉える。
 背後にいる男の指が、陰毛に包まれた両脚の間の唇に触れる。内部からあふれ出た愛液が、彼の指先をつるつると滑らせた。
「んんっ……う……」
 シェリルは微かに呻き、ロデリックの手を秘所にはさみこむように脚を閉じる。
「シェリル。脚開けって」
 目を閉じて、ロデリックの声だけ聞こうにも、グレンの声が割り込んでくれば、彼の存在を意識しないわけにいかない。グレンの視線が体に突き刺さる気がする。それも錯覚だろうか。息苦しさが増し、彼女は大きく喘いだ。
「シェリル……」
 促すように、もう一度耳元でロデリックが囁く。
 まるで動物になってしまったようだ。彼女の扱いをよく知っている飼い主が、新しい飼い主に、彼女の素晴らしさを見せているようである。
 耐え難いほど屈辱的な想像だったが、それはシェリルの体の芯に熱い塊を落とす。体の内側から、さらに熱いものが溢れてきた。僅かに身じろぎすると、それは膣から滲み出し、秘唇を撫でているロデリックの指を濡らした。
 彼は娘の粘液にまみれた手で、彼女の内股を軽く押して広げさせた。彼女はその動きに逆らわなかった。
 濃密な愛液が糸を引き、シェリルの陰唇もさらに大きく開かれる。そこにロデリックの指先がぬるりと入り込んだ。
 顎をつかんでいた彼の手が、シェリルの肩をつかみ、体を引き寄せられる。背中に彼が着ている服の乾いた感触と、その向こうにある肌の熱を感じた。彼女の長い髪の中に、ロデリックの顔がもぐり込む。うなじに濡れた唇が触れ、そこを軽く吸われた。
「はっ……あ……! ああっ」
 痺れるような陶酔が、あっという間に全身を駆け巡った。喉を仰け反らせるシェリルを、ロデリックがさらに強く抱き寄せる。尻に彼の熱い昂りが押しつけられるのが分かった。
 彼もまた静かに興奮している。けれど向かいあって情熱を絡ませることができない。今はそれをもう一人の男に見せているしかない。
 もどかしさと恥辱は、シェリルの情欲を燃え上がらせる。脈動のように、熱いかたまりが何度もこみ上げ、彼女は静かに涙を滲ませた。  

 指先が、絶え間なく愛液を溢れさせる膣の入り口に触れる。彼女のそこは男性を迎えようと、開きかけている。綻び始めた入り口を、ロデリックの指がじっとりと撫でた。濡れた卑猥な音が、思ったよりも大きく響く。それは彼女の秘部を探る男、それを正面から見ている男、そして彼女自身をも熱くさせた。
「はあっ、や……」
 言うことを聞けと何度も言われたが、恥辱に耐え切れずに、シェリルは再びロデリックの腕をつかんだ。だがその腕を脚の間から引き離そうとする力など、もうあるはずもない。彼も彼女の動きなど気にも留めず、限りなく柔らかい膣の入り口を、指先で優しく撫でている。
 焦らすような動きに、目を閉じたままのシェリルは、彼の指をさらに飲み込もうとするように、無意識のうちに腰を浮かせた。
「かわいいもんだな」
 骨に響くような低い声が降ってくる。揶揄しながらもどこか慈しむような響きに、彼女は酩酊した。自我や自分の存在の芯というようなものを、するすると抜かれていく気がする。そして自分の乱れた姿が、彼女に触れずに、ただ見ているだけの男の目を楽しませていると知って、浮かせた腰が震えるほどの愉悦が走り抜けた。
 しかしロデリックの指は、さらに体の奥深くへとねだるようなシェリルの動きを無視し、膣から離れると、秘唇の中をゆっくり前へと滑った。満ち溢れた愛液が、湿った音を立てる。
 彼の指は、その裂け目の端で膨んでいる、小さな肉の蕾に触れた。
「ああっ、あ……。待って」
 限界近くまで昂り、敏感になりすぎた陰核は、シェリルに痛いほどの刺激を伝えてきた。彼女は哀願するように、か細い声で囁いたが、男の指はそこを何度か軽く押し、下から掬うように、小刻みに震わせ始めた。
「待って。まって。あ……や……!」
 目を閉じた視界に、稲妻のような光が走る。脚の間に、強烈で切ない快楽が突き刺さった。
 彼の指は、襞をかき分けて、さらに深く入り込む。
「んんっ、あっ、ああああっ……だめ……まって」
 力が抜け切った嬌声を放つシェリルのそこは、与えられた刺激に応じるように粘液が滲み、彼女の快楽の蕾と彼の指を覆い始めた。
「痛い?」
 荒々しい指の動きとは正反対の、穏やかで優しげな囁きが、耳の奥に忍び込んだ。シェリルは反射的に首を振る。鋭すぎる快楽は痛みに似ていたが、それに耐えることがまた別の快楽であった。痛いと答えることで、ロデリックに動きを緩めて欲しくはない。
 彼の指は、さらに動きを早める。
「あっ、あっ、ああああっ……、あうううぅ……だめ……!」
 シェリルの深い喘ぎを聞き、背後にいる男も、彼女の首筋に切なく深い溜め息を吐きかけた。
 もう自分の意志では自由にならず、彼女の腰はロデリックの指の動きに合わせるように、艶かしく前後にくねった。
 二人だけではない。この場にグレンもいて、脚を広げ、動物的に腰を揺さぶっている彼女の動きを、真正面から見ている。分かってはいたが、その事実は羞恥と堕落した情熱を煽るだけで、官能の抑止には全く役に立たなかった。
 肩を抱いていたロデリックの反対の手が、再び乳房を握る。
「ああっ!」 
 乳首を摘まれ、凄まじいほどの痺れが、体の芯を貫いた。
 肉体の全てを官能にからめとられ、身動きができない。その仄暗い束縛感すら、彼女の精神を情欲の海へと押し流していく。
「うう……いやっ……やあああっ……はあああああっ!」
 シェリルの肉感的な小さな唇からほとばしる嬌声は、徐々に獣じみてきた。
 背後から男に愛撫され、交尾をねだる雌猫のような痴態を晒す娘を見下ろしている男は、僅かに唇を噛んで劣情をこらえた。グレンの股間も、シェリルの熱が感染したように熱い。もはや彼女は、彼の視線に恥らう余裕も無いようだ。濡れそぼった秘所をさらけだし、空気を求めるように喘ぎながら、ロデリックの愛撫に陶酔している。
 今すぐロデリックを押しのけ、愉悦に鳴くシェリルに自分の情熱を突き立ててやりたい。
 しかしグレンはその衝動を飲み込んだ。まだいい。もう少し様子を見てもいい。
 だが強烈な情欲は、腹の奥に押し込めるほど、内側で強さを増す。彼の一物がさらに硬さを増して、立ち上がっていくのが分かった。

 ロデリックに乳首と陰核を刺激され続け、シェリルの脳は沸騰寸前だった。隣は士官の部屋であることも忘れ、彼女はあられもない叫びを上げ、体を揺さぶって、悦楽を訴えた。
「シェリル……静かにして」
 耳元で囁くロデリックも、荒く呼吸が弾んでいる。耳の奥を撫でる吐息も、冷静さが溶け出した声も、彼女にさざ波のような緩やかな快楽を伝えてきた。
「むり……むり……! だって……うあ……あぅ……」
 乳房を握っていたロデリックの手が、もう一度シェリルの顎を捕えた。親指で唇を押し開けられる。唾液が溢れた彼女の口の中に、右手の中指と人差し指がこじ入れられた。本能的に、シェリルは彼の指を舌で絡めとろうとする。
「んう……ふうっ……」
 皮膚の淡い塩辛さが舌に沁みる。彼女の叫びはくぐもり、小さくなった。
 首筋に唇が押し当てられる。舌が肌を撫でた後、そこを強く吸われた。シェリルはもう一度叫んだが、二本の指で舌を押さえられ、やはり唾液混じりの鈍い声が響いただけだった。
 陰核をなぶる指先が、さらに強く押し込まれてくる。目の前で火花が散った気がした。強烈な尿意を同時に覚えた。
「ううっ……ふうううううっ……!」
 指先の動きが急速に速まる。陰核を濡らしている粘液が、濡れた音を盛大に響かせた。体に与えられる感覚以外の、全てがシェリルから削ぎ落とされていく。彼女はわけも分からず、破裂しそうなほど熱く切なくなった秘所をどうすることもできず、ただ口の中に差し込まれた指を舐め回した。ロデリックの腕を握り締めた手に力がこもる。
「うああああっ……ふああああああっ……」
 咽びながら背中を大きくのけぞらせる彼女の耳に、もう一度唇が寄せられる。
「シェリル……かわいいよ……いっていいよ」
 彼女は小刻みに首を振った。ロデリックが重ねて囁く。
「シェリル、お願い。いって」
 シェリルの頭の中、体の奥で何かが弾けとんだ。下腹部から猛烈な熱がせり上がって、彼女を包み込む。かつて睦み合っている時の彼の言葉は、口調は懇願であろうとも、彼女にとっては全て命令だった。
 体の芯が収縮する。ロデリックの指をくわえ込んだまま、シェリルは最後の叫びを上げる。そのまま何度かびくびくと体を震わせて、彼女は悦楽の極みに達しながら、かつて呼んでいた彼の名前を叫んだ。

 
「コヨーテとはな、懐かしい通り名じゃねえか。随分古い知り合いみたいだな」
 シェリルが愉悦の残滓に浸っていたのは、ごく短い時間だった。冷えたグレンの声を耳にし、彼女は目を開ける。グレンはぐったりしたシェリルを見つめながら、右手に握っていた短剣を鞘に納めた。
 彼が左の腰に下げている長剣を抜く。
 刃が鞘に擦れる音が、シェリルを官能の海から引き上げた。
「交替だ、ロデリック。女の乱れっぷりに免じて、左腕一本で勘弁してやる。右手がありゃ字は書けるだろ」
 抜き身を手にしたまま、グレンは無造作に寝台に歩み寄った。シェリルの体に巻きついていたロデリックの手が離れる。背後で彼が膝立ちになったのが気配で分かった。しかし彼の短剣は床に落としてしまった。ロデリックも、そしてシェリルも身を守る術が無い。
 シェリルは懇願するように、近づくグレンを見上げた。だが彼の鋼鉄のような視線を前に、言葉が出てこない。焦りで鼓動が再び高まる。
 冷笑を浮かべたグレンは、獰猛な声で言い放った。
「あとは端っこで、俺がその女とヤるのを見てろ。左手で最後に触ったのが女の股なら、未練は無いだろう」
「無いわけないでしょう」
 すぐ後ろで答えた声は、彼女を戦慄させた。彼のこんな声は、以前にも聞いたことがない。深く虚ろで、氷よりもなお冷たい、心の深淵から響いてくるような声だった。
 寝台の上で膝立ちのまま、ロデリックはシェリルの前に出た。視界が翳り、彼女は咄嗟に顔を上げたが、グレンの方を見ている彼の表情は見えなかった。
 グレンは恐らく本気だ。
 だがロデリックが傷つけられるのを黙って見てはいられない。

 ロデリックは全裸の女を庇うように前に進み出る。それを見下ろしたグレンの記憶の底を何かが撫でた。
 有能な副官の目の奥に、底知れない光が居座っている。彼を副官に取り立ててからは、そんな表情は目にしたことが無かった。
 もう一度、微かな既視感がグレンの脳を引っ掻いた。
 ロデリックは丸腰だ。その後ろにいる女に至っては、無防備極まりない全裸である。彼の左腕を叩き落し、それを見て、恐らく泣き喚くであろうシェリルを押さえつけて抱くことなど、造作もないはずだ。散々彼らの痴態を見せつけられ、抑えに抑えた欲望を、苛立ちと共にその場で解き放つのは、またとない快感だろうと思えた。
 だが不覚にも、グレンの足先の親指が一瞬竦む。ごく微かな警鐘が頭の隅で鳴った。先日シェリルを抱いた時に、娘に覚えた得体の知れない予感が、再び浮かび上がってくる。
 命がけだ。
 グレンはそう直感した。この場で彼らに制裁を加えるには、彼も相応の覚悟をした方がいい。抵抗の術など持たないはずの二人の男女に対し、何故か彼は確信した。

 睨み合いは数瞬だった。
 重い溜め息が落ちる。グレンは忌々しそうに舌打ちをし、苛々と前髪を掻きながら、長剣を鞘に納めた。
「今までのお前の働きに免じて、今晩だけは見逃してやる」
 グレンの呟きを聞いても、ロデリックは微動だにしなかった。引き続き彼の上官を油断なく見据えている。グレンは目をすがめてロデリックを見下ろし、続けた。
「だが調子に乗るなよ。他言も無用だ。他の士官どもに示しがつかん。──同じことをすれば、次は殺す」
「はい」
 ロデリックは一瞬目を伏せ、短く返答した。慈悲を与えた上官に対し、詫びも礼も無い。
「シェリル」
 突然グレンに名前を呼ばれ、肩を震わせながらシェリルは顔を上げた。ロデリックの肩ごしに、彼女を見下ろすグレンの氷のような表情が見える。
「お前もだ。そいつとどんな知り合いかは知らないが、お前がそいつについて知っていることは全部忘れろ。他の人間に知られると都合が悪い。そのガキの経歴は、俺がこの前お前に話した通りだ」
「……はい」
 掠れた声で彼女も答えた。
 やはりグレンが先日語っていた、ロデリックの生まれや育ちは、偽りだったのだ。彼のかつての通り名を知っていることからして、恐らくグレンは、シェリルが知るのと同じ、ロデリックの過去を知っているのだろう。
 強張ったシェリルの顔を見て、グレンは一瞬冷めた笑みを浮かべた。
「それから、この前言った通り、他の男に簡単に体を触らせるな。次は相手の男を本当に城壁から蹴り落とすぞ」
 シェリルが返事を返さずにいると、グレンは小さく嘲笑めいた笑い声を漏らし、背を向けた。振り返りもせずに出口へ歩み去る。扉が音もなく開き、暗い廊下が男の後姿を飲み込んで閉じた。


 グレンの姿が完全に消えたところで、ロデリックは大きく息をつき、シェリルを振り返った。
「シェリル……今、何しようとしてた?」
 思いがけず、非難するように見つめられ、シェリルは口ごもる。
「だって……」
「あいつに魔術を使えることを知られない方がいい。君がギルドを出奔した魔術師だなんて知られたら、いいように使われるだけだ」
「でも、あの人、あなたを……」
 反論する間もなく畳み掛けるように言い募られ、シェリルは唇を噛んだ。
 ロデリックの言う通りだ。これから伯爵領に戦を仕掛けるグレンに取って、魔術を使える人間がいれば、願ったりの人材だろう。ギルドに属している魔術師は、決して権力者の為に魔術を行使しない。だがシェリルが属するのは、もはやギルドではない。
 ロデリックは張り詰めていた表情を緩め、右手で彼女の裸の肩を掴んだ。
「……そうだね、ごめん。僕のせいで、僕のために……」
 彼は言葉を詰まらせた。
 何かがシェリルの心にも伝染し、それをはっきりと捉える前に、彼女は涙ぐんだ。泣き顔に表情が歪む前に、肩を抱き寄せられる。シェリルも彼の背中に縋りついた。やや細身の彼の背中は、記憶にあるより幾分がっしりしている気がする。
 ロデリックの両腕にも力が込められ、さらに強く深く抱き締められた。こらえきれずに瞳から流れた涙が、彼の鎖骨を濡らす。
 会いたかった。
 こうして腕に包まれていても、まだ信じられない。二度と会うことは無いと確信しつつ、いつかもう一度会いたいと熱望していた人と、もう一度会えたことが信じられない。
 しばらくふたりは、固く抱き締めあっていた。
 ロデリックが顔を押し下げる。応じるように彼の胸から顔を上げたシェリルの唇が、彼の唇で塞がれた。すぐに忍び込んできた熱い舌を、彼女も夢中で吸い込む。

 訊きたいことはたくさんあった。話したいこともたくさんあった。
 けれどシェリルは、熱にうかされたように、性の歓喜の熱が残る体で、ロデリックのくちづけを味わうことで精一杯だった。
 背中を抱いていたロデリックの手が、前に回ってシェリルの乳房を包む。
 このまま何も語れずに、快楽に流されてしまうことは悲しかった。
「待って……」
 理性を総動員して、やっとの思いでシェリルは彼から唇を外す。
「どうして」
 切なげな瞳で彼女を見下ろす男の声は、情欲ににごっている。
「だってさっき、グレン様が……」
 次に同じことがあれば殺すと、グレンははっきりと言った。
 それに何も語らぬまま、まず抱き合うというのは、まるで動物のようだ。
 そしてもうひとつ、グレンが語ったことがシェリルの頭に引っかかっていた。しかし彼女はそれを自分の意志で、脳裏の隅へと押しのけた。
 情熱的な仕草で、もう一度シェリルにくちづけた男は、彼女の耳元に唇を寄せて囁いた。
「今夜は見逃すって言ってたでしょ。あいつは戻ってこないよ。今しかないんだよ」
 今しかない。その刹那的な響きは、暗示のようにシェリルの耳から脳へと入り込んだ。
 ロデリックは再びくちづけし、彼女の唇の中に舌を差し入れながら、豊かな乳房を揉みしだいた。その動きは先ほどと比べて、乱暴なほど激しかった。
 顔を下げた彼が、啄ばむように乳首を吸う。
「はっ……!」
 シェリルは鋭い溜め息を吐いた。
 先ほど限界を超えてたかぶった情熱は、グレンとの問答を経た後も、彼女の体の中でくすぶっている。
 ロデリックは舌先で固くなった胸の蕾を撫でながら、座った彼女の体を、ゆっくりと押し倒した。彼はもう一度軽く彼女にくちづけを落とすと、膝立ちのまま、ベルトとズボンの留め具を外した。
 今しかない。ロデリックと、かつての知り合いとして話すことができるのも、恐らく今しかない。語るか、抱き合うか。
 しかしシェリルと重なろうとして、息を乱し、性急な仕草で服を脱ぎ捨てる彼を見ていると、再び襲ってきた官能の波にさらわれ、もう迷うこともできなかった。
 仄かな明かりに浮かぶ、上着を脱ぎ捨てたロデリックの上半身は、やはり記憶にあるより、ほんの少しだけたくましくなっている気がした。僅かに胸は厚みをたくわえ、腹の筋肉が浮き出ている。ズボンと下着を脱ぎ捨てた彼の下半身は、彼女を求めて熱く立ち上がっていた。
 鼓動がはちきれそうに高鳴る。
 彼は指を彼女の脚の間に差し入れた。快楽の絶頂に達したばかりの彼女のそこは、まだ熱く潤っている。彼女の黒い瞳を見つめながら、体内への入り口を探り当てたロデリックの指が、ぬるぬるとそこへ潜り込む。
「ふあっ……! あ、あ、あっ……!」
 ずしりと重い感覚を押し込まれ、シェリルは悲鳴のような声を上げた。すかさずロデリックに口を塞がれる。
「静かにしてってば。隣に聞こえたらやばいよ」
 彼女は何度も頷きながら、涙ぐんだ目でロデリックを見つめ返した。
 彼はそんな彼女に微苦笑を見せると、愛液に潤んだ膣の中で、湿った柔らかさを味わうように、指を蠢かせた。
「んんんっ……! んあ……!」 
 口を塞がれたまま、腹の奥から押し寄せてくる快楽につられ、シェリルはくぐもった声を上げた。敷布をつかんで嬌声をこらえようとしたが、彼女には非常に難しかった。
「シェリル」
 指を体内に差し入れたまま、熱い息が混ざる声で彼女の名前を囁きながら、ロデリックは何度も彼女の乳房、腹、臍へとくちづけをした。
 意識が混濁し始める。時間が戻ったような錯覚に襲われ、シェリルは一瞬、自分がどこにいるか、誰なのかも忘れた。

 膣から指が抜けていく。
 両脚が大きく開かれ、ロデリックの体が割り込んだ。シェリルの体の両脇に手をつき、体を支えた彼の分身が、秘唇を押し退けて、彼女の入り口に押し当てられる。
 何度か探るようにそこを突かれた後、熱い塊が、一気に彼女を貫いて押し入ってくる。
「あっ……あああああっ……! ああっ……あ……!」
 目がくらむような愉悦だった。一度快楽を極め、収縮して狭まっていた膣が、再び男性自身で押し広げられていく。彼女の叫びは、息も絶え絶えだった。
 痙攣するように微かに震える娘を、ロデリックは両手で抱き締める。彼女がびくびくと体を震わせるたび、体内に差し込んだ彼自身が、甘く締めつけられた。
 シェリルの震えが収まるのを待って、彼は体を動かし始めた。
「はあああっ、あううっ、あう、あう……!」
 再びあられもない嬌声が飛び出す唇が、ロデリックの唇に塞がれる。彼女の叫びは全て彼の中へと吸い込まれてしまう。
 シェリルは全身で彼の存在を感じようと、両腕でしっかりと彼の背中にしがみつき、両脚を彼の腰へと巻きつけた。
 ふたりが荒い呼吸を交わし、一体になって体を揺さぶっていたのは、そう長い時間ではなかった。やがて男が大きく息を乱し、唇を外して囁く。
「シェリル……出すよ。いくよ」
「来て。お願い……!」
 わけもわからず、何も考えることができず、体の奥に突き刺さり続ける悦楽に屈服して、シェリルは叫んだ。
 一瞬、彼ではない男の面影が頭に浮かんだが、圧倒的な白い歓喜の海に呑まれ、それはすぐに消えた。

 シェリルの体内に情熱を放った後も、彼は自身を引き抜こうとはせず、彼女を抱き締めてその体の上に覆いかぶさっていた。
 微かに震える彼女の唇に、もう一度くちづけが落とされる。目を閉じたままのシェリルの瞼の裏に、闇が、そして砕いた輝石と硝子を撒いたような、星空が広がった。
 彼の肌と体温、微かに漂う汗の匂いを感じながら、シェリルは無限の安堵に包まれた。



 シェリル、やっと会えた。
 ずっと君にもう一度会いたかったんだ。
 君の手を離したことを、いつも後悔してたんだよ。
 もう泣かないで。
 これからはずっとそばにいるから。
 君がいないと、僕もだめなんだ。
 そんなところでひとりで泣いていないで、一緒に東に戻ろう。
 何があっても、君を傷つけるすべてのものから、僕が守ってあげるから。
 だから、ずっとそばにいて。



 シェリルが浅い眠りに身を委ねていたのは、ごく短い時間だった。
 夢を見ていた気がする。彼女が辛い状況に追い込まれた時、いつも涙をこらえながら空想していたことを、眠っている時に夢で見たのは、初めてだった。
 波打ち際にほんの少し足を浸すような、ささやかなまどろみからは、すぐに覚醒した。
 シェリルに覆いかぶさっていた男の重みは、既に無かった。
 シェリルは目を閉じたまま、横たわる彼女のすぐそばで動く男の気配をぼんやりと探っていた。
 衣擦れの音がして、彼が脱ぎ捨てた服を着込んでいるのが分かる。やがて固い足音が床に落ち、靴を履いたロデリックが立ち上がったようだった。
 仰向けに横たわったシェリルの脚の間に、柔らかい綿の布が触れる。彼の手は丹念な仕草で、そこから溢れ出した液体を拭った。
 それが終わると、裸のままのシェリルの体に、ふわりと軽い掛け布がかぶされる。
 机の上に置かれた、香油の入った壷が触れ合う音が微かに聞こえた。小さな吐息の音と共に、シェリルの瞼の向こうで薄明かりが消え、真の闇が降りる。
 ためらうような足音が、すぐそばでこつりと聞こえた。
 やがて空気が動いて、彼女の額に掌が触れ、前髪が静かにどけられた。彼の手はそのまま静かに、長く伸びたシェリルの髪を撫でる。
 額に唇が触れた。
 ひそめた足音と、籠の中で香油の壷が触れ合う音が、徐々に遠のいていく。
 扉の取っ手が捻られ、廊下の空気が僅かに流れ込んできたのを感じた。
 静かに扉が閉まる。
 シェリルはそっと目を開けた。蝋燭の明かりが消された室内は、闇に閉ざされている。
 その優しく、よそよそしい暗闇を抱き締めるように、もう一度瞳を閉じた。彼女の意識は今度こそ、心の奥底、深淵へと沈んでいった。
す、すみません。
どうにか更新しましたが、推敲が甘いので、誤字脱字に自信アリです。
…直します、直します。

事情により、更新を優先させたかったので、折角感想くださった方へのお返事が遅れてしまっています。申し訳ございません。少しずつ、書かせていただきますm(_ _)m
(ごめんなさい〜!! 感想いただけるのが何よりの励みなのに…)

次の更新は一週空く予定です。

<<7/27 追記>>

↑…などと書きましたが、スミマセン、次の更新はさらに一週空いて、8月二週目になる予定です。
こんなところで切っておいて、ごめんなさい〜〜!
web拍手

作者ブログ『椰子の実ライブラリ』


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