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08 妹なんだけど
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

「こっち・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

後ろから誰も追って来ない事を確認しながら、校舎の屋上を目指していた。

「ちょっと待って。ふぅ・・・急に走ったから息が・・・。」

途中で見つからないように全力で走った俺の息も切れていた。
麻衣も言った通り、手で胸を抑えながら息を切らしている。

「純平、疲れちゃったよ。」

その抑えてた片手が俺の方へ向けられた。
“引っ張って”そういう意味で差し出された右手。

「ちょっとしか走ってないじゃん。」

「でも、いきなりだったから・・・。」

麻衣の右手をそっと握る。
誰も追って来ない事が分かると、ゆっくり麻衣を引くように屋上への階段を歩いていた。
女の子と手を繋ぐなんていつ以来だろう。
麻衣の柔らかな手の感触が気持ち良かった。
屋上の扉を開けると、都合のいい事に誰もいない。
コンクリートの段差を椅子代わりに腰掛けると、ようやくホッと一息つく。

「びっくりしたな。」

「うん。みんな私を囲むんだもん。」

「え?ああ、そうだな。」

俺がびっくりしたのは、麻衣が校内を案内してもらうのに俺を指名した事だった。
兄妹だから?
麻衣にとっては驚く事ではなかったのかもしれない。

「でも、前の学校でもモテてたんだろう?」

「・・・そんな事ないよ。」

当たり前だと思って聞いた質問を、麻衣はあっさり否定する。
自分では謙遜してるのが麻衣の謙虚な所だ。

「だって麻衣ってかわいいじゃん。絶対モテてたと思うけどなぁ。」

「そんな事ないよ。みんな転校して来て、面白がってるだけだよ、きっと。」

「違うと思うけど。」

話しの流れから、聞きたかった事を聞くチャンスかもしれないと思った俺。
思い切って麻衣の異性関係を聞いてみる事にした。

「前の学校でも付き合ってる奴とかいたんじゃないの?」

「そんなのいないよ。付き合った事なんてないもん。」

「嘘だぁ!」

「ホントだってば!」

その言葉に俺はなぜか安心してた。

「でもさ、告白されたりはした事あるだろ?」

「・・・うん。」

「やっぱりそうだよな。」

そう言うのを含めて、モテてると俺は思うのだが、麻衣には実感がないようだ。

「あんまり付き合うとかって・・・。」

「ふーん、そんなもんかな。」

苦笑いを浮かべる麻衣。
どうやら異性の話しは苦手なのが分かる。

「でもね、付き合ってって言われた事はあるけど、面と向かってかわいいなんて言ってくれたの、今の純平ぐらいだよ。」

謙虚過ぎて嘘臭いが、麻衣の言葉には偽りがなさそうな気がした。
俺の言った言葉に、俯きながら頬を染めて照れている。
そんな反応されると、俺の方まで照れ臭くなった。

「あー、走ったから暑いなぁ。」

火照る顔を誤魔化しながら俯く麻衣とは逆に空を見上げていた。
話題を変えないと場が持たない。

「だいたいさ、兄妹で同じクラスってないと思ってたんだよな。」

「・・・ごめん。」

理由は分からないが麻衣が謝ってきた。

「私が知らない人ばかりだと嫌だからって学校にお願いしたの。純平にも話しとけばよかったね。」

「そうだったんだ。」

どうりで同じクラスになる訳だ。
しかし、何だろう?
麻衣に頼られてる感じがヒシヒシと伝わってくる。
誰かに頼られるなんて事は、今までなかっただけに不思議な感覚だった。
麻衣は俺が優柔不断でだらしない本性を知らないから、そんな事を言うんだろう。

「そろそろ戻ろうか?もう落ち着いてるんじゃない?」

立ち上がると、お尻をパンパンと払う。
笑顔を浮かべた麻衣に見下ろされると、麻衣が天使にでも見えるような気がした。

「・・・そうだな。戻ろうか。」

・・・でも麻衣は“妹”なんだよな。
複雑な思いで、俺は自分に問い掛けていた。


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