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49 恋する気持ち 〜由衣side〜
家に帰ると熱くなった体を冷ますように、コップに注いだ冷たい麦茶を一気に飲み干していた。
落ち着きを取り戻そうとしても考えるのは水島君の告白。
返事をどうしようか悩むと、せっかく冷めた頭もすぐに熱くなっていく。
自分ではどうしていいか分からない。

「どうした?由衣。」

「お兄ちゃんっ!」

「な、何だ?何だ?」

出掛けて帰って来たお兄ちゃんに一目散に駆け寄っていた。

「えっ?こ、告白?」

「・・・うん。」

お兄ちゃんに告白された話しを相談していた。

「そっか。もうそんな年頃なのかー?俺なんか告白もした事ないのにさ〜。」

笑いを浮かべて、のん気なお兄ちゃんには私の事の重大さが伝わってないような気がした。

「ちゃんと真面目に聞いてよっ!」

「聞いてる。聞いてるって。」

切実な言い方に、私の切羽詰った思いがお兄ちゃんにも届いたのかもしれない。
ようやく真剣に話しに耳を傾けてくれた。

「花火大会に誘われたんだよな。」

「うん。」

「週末の花火大会って重要だったりするんだ。」

毎年、8月の最初の日曜の夜に行われると言う恒例の花火大会。
花火大会がある事は知っていたけど、特別な何かがあるらしい。

「由衣は知らないだろうけど、花火大会の最後は大きな花火で締めるんだ。」

「ふーん。」

「で、それを2人で見ると、その1年仲良く過ごせるって都市伝説みたいな噂があってさ。」

「だから一緒に見たいって言ってたんだね。」

「そうだと思うよ。好きなんだな、由衣の事。」

私の知らなかった事だった。
好きだから一緒に見たくて、噂を信じて、誘ってくれた。

「由衣は正直な気持ち、どう思ってる?」

「・・・分かんない。」

「分からないかぁ。」

初恋もまだな私。
人を好きになる気持ちが分からなかった。

「中学の時だけど・・・。」

そんな私にお兄ちゃんが自分の恋愛の体験談を話し始めた。

「好きな子の事を考えるだけで胸がドキドキしたり、話すだけでワクワクしたりしたっけ。」

「ふーん。」

「楽しいようで切ないようで・・・。人を好きになるっていい事だと思うけどな。」

「・・・どうしたらいいんだろう。」

でも、答えは見つからなかった。

「そうだなぁ。適当に何となく付き合うっていうのは、俺は嫌だけど・・・。」

「私もそう思う。」

「だから、よく考えて由衣がいいと思ったら付き合ってもいいと思う。」

「そうなの・・・かな?」

「ああ。だってさ、告白ってすごい勇気がいると思うんだ。」

「勇気?」

「そう。振られたらどうしようっとか考えたら、なかなかする事も出来ないもんだろ?」

「・・・。」

「俺なんか友達のままがいいとか思っちゃって、中学の時は告白出来なかったなぁ。」

ネガティブ思考の私には、よく分かる説明だった。
それを思うと、仮に私に好きな人が出来ても告白は出来ないと思う。
そして、告白してくれた水島君の勇気ある決断は、半端ない事だったと今更ながら分かる気がした。

「無理に付き合えとは言わないけど。“分からない。”じゃなくて、由衣も真剣に考えてみたらどうだ?」

「うん、そうだよね。」

人を好きになる気持ちってすごい事だと思った。
恋愛なんて私には、まだまだ無縁な気もしてた。
私を好きになってくれる人がいる事に感謝しなきゃいけない。
だから人に頼らず、自分でちゃんと考えてみようと思った。

「まぁ、俺の本音を言えば、由衣に彼氏が出来たら嫌だけどなぁ。」

「えっ?」

「・・・何で驚いてるんだよ。当然じゃんか。」

お兄ちゃんの照れ笑い。
私の事を心配して見てくれてる。

「ちゃんと考えて返事するね。」

「ああ、そうだな。」

人を好きになる気持ちとかよく知らなかった私。
お兄ちゃんのアドバイスも頭に入れながら、私自身で水島君の事を考えて返事しようと決めた。





「・・・ごめんなさい。」

水島君を呼び出して返事を伝える。

「そっか。」

「水島君の事、嫌いじゃないんだけど付き合うっていうのは・・・。」

「・・・分かった。」

申し訳なかったけど、それが私の出した結論だった。

「水島君に告白されて、嬉しかったよ。ありがとう。」

「そうなんだ。」

「だけど、やっぱり付き合うって事になると・・・。」

「うん。」

真剣に考えた結果の私の気持ちを一生懸命水島君に伝えようと思った。
でも言葉ではうまく伝えられない。

「一生懸命悩んだの。ホントに!でも私・・・何て言っていいんだろう。」

「いいよ、もう。ありがとう。ちゃんと答えてくれて。」

ちょっと泣きそうになってしまった。
せっかく、こんな私を好きになってくれたのに・・・。

「・・・。」

人を好きになる気持ちは、私にはまだ難しい。
そんな気持ちをいつか私も感じる事が出来るのかな。
ちょっぴり大人になった気がした。


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